時代をつくった男 阿久悠物語

24時間テレビドラマスペシャル『時代をつくった男 阿久悠物語』詳細解説

このドラマは、2017年8月26日に日本テレビ系列で放送された『24時間テレビ 愛は地球を救う40』内のスペシャルドラマとして制作されました。昭和を代表する作詞家、阿久悠氏の生涯を、数々の名曲誕生秘話や、激動の時代の中で葛藤する姿、そして音楽への揺るぎない情熱を交えながら丁寧に描き出しています。主演は人気俳優の亀梨和也氏が務め、平均視聴率は25.6％を記録するなど、大きな話題となりました。

ストーリー

物語は、現代の海岸で女子高生たちが阿久悠氏の代表作の一つである「狙いうち」をスマートフォンで聴いている場面から始まります。このシーンは、阿久悠氏の楽曲が時代を超えて愛され続けていることを象徴的に表しています。

その後、ドラマは阿久悠氏の生い立ちへと遡ります。本名・深田公之氏として広告代理店に勤めていた彼は、密かに放送作家のアルバイトを始め、「阿久悠」というペンネームで活動を開始します。そこで出会ったのが、後に妻となる深田雄子氏です。結婚後、彼は広告代理店を退職し、プロの放送作家として独立。並行して作詞家としての活動も開始し、次々とヒット曲を世に送り出していきます。

1971年には、日本テレビのプロデューサー、池沢氏から声をかけられ、新たなオーディション番組『スター誕生！』の立ち上げに参加。審査員として出演した阿久悠氏は、森昌子やピンク・レディーといった、後の国民的スターを発掘する役割を担います。この番組の大成功により、阿久悠氏は時代の寵児となり、数々の日本レコード大賞を受賞するなど、まさにヒットメーカーとしての地位を確立しました。

しかし、1980年代に入ると、音楽業界を取り巻く環境は変化し始めます。娯楽の多様化やニューミュージックの台頭により、阿久悠氏への作詞依頼は減少していきます。時代に取り残されていく焦燥感や、自身のスタイルが受け入れられなくなっていく苦悩、そして音楽シーンから溢れ出す音楽の減少など、複雑な思いを抱える阿久悠氏をドラマは繊細に描いています。

そんな中で、親友である漫画家・上村一夫氏の訃報に接し、弔辞を頼まれます。葬儀の後、妻・雄子氏から「時代を作る役目は十分果たした」と言われたことで、阿久悠氏は自身のキャリアを振り返り、新たな決意を固めます。時代を追いかけるのではなく、時代を動かす作品を作りたいという思いを胸に、彼は創作活動に邁進していきます。

そして物語の最後、現代の雄子氏が自宅で発見する未発表詞「子供たちの未来をよろしく」は、ドラマの感動をさらに深める重要な要素となっています。この曲は、ドラマ終了直後につんく♂氏の作曲によって披露され、視聴者に大きな感動を与えました。

キャスト

阿久悠役を演じた亀梨和也氏をはじめ、松下奈緒氏、田中圭氏、加藤シゲアキ氏など、豪華なキャスト陣が出演しています。それぞれの俳優陣が、それぞれの役柄を熱演し、阿久悠氏の生き様をリアルに表現しています。

その他

このドラマは、『24時間テレビ』のドラマスペシャルにおいて、闘病記や障害者を取り上げたノンフィクション作品が中心であった中で、初めて原作のない著名人の生涯を描いた作品として注目されました。また、放送翌日には『24時間テレビ』内で阿久悠氏の楽曲によるスペシャルメドレーが放送され、改めて彼の偉業が再確認されました。

このドラマは、単なる人物伝ではなく、昭和から平成へと移り変わる時代の中で、音楽家として、そして一人の人間として葛藤し、生き抜いた阿久悠氏の姿を丁寧に描き、視聴者に深い感動と余韻を与えてくれる作品です。音楽史に残る数々の名曲の裏側に隠された、知られざる阿久悠氏の物語は、多くの人に感銘を与え続けるでしょう。

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