暗号名 黒猫を追え!

映画『暗号名 黒猫を追え!』の概要

『暗号名 黒猫を追え!』は1987年に公開された日本の映画で、スパイ防止法の制定を推進する活動を描いています。この映画は、国際勝共連合が中心となり、スパイ法について一般の理解を促進するために制作されました。

背景

1979年2月、自民党の国防政策に関与する国会議員と国際勝共連合の協力により、スパイ防止法制定を推進するための「スパイ防止法制定促進国民会議」が設立されました。その後、1984年に自民党や民社党の議員、さらには保守系の財界人を巻き込んだ「法律制定促進議員・有識者懇談会」が組織され、スパイ防止法の必要性が議論されていきました。

1985年には伊藤宗一郎らによってスパイ防止法案が衆議院に提出されましたが、同年の年末には審議未了で廃案となりました。この背景には、スパイ防止法の必要性を感じる人々と、その存在を危惧する勢力間での意見の対立がありました。国際勝共連合は、スパイ防止法の重要性を国民に訴えるため、映画を制作する決定を下しました。

映画制作

映画の監督は井上梅次と岩清水昌宏が共同で務め、音楽には都倉俊一が起用されました。井上は以前にも統一教会に関連する映画を手がけており、スパイ防止法についての認識を深めるためのプロジェクトに再度関わることとなりました。映画は1987年6月23日に東京商工会議所ホールで初めて上映され、以降も多くの上映会が全国各地で行われました。

ストーリーの内容

映画の内容は、架空の「B連邦スパイ」と「北方共和国」工作員による日本国内での諜報活動と、それを阻止すべく奮闘する日本の公安警察の姿を描いています。この映画における「B連邦」はソビエト連邦を、また「北方共和国」は朝鮮民主主義人民共和国を指すものと解釈されています。ストーリーは、街中での緊迫した捜査や情報戦を中心に展開し、観客に対してスパイ活動の危険性を強調しています。

評価と影響

映画批評家の前田有一は、この作品を「当事者側がプロパガンダに利用する一例」として捉えています。上映後には反対運動も巻き起こり、その資金が問題視されるなど、映画の制作背景や政治的意図が議論されました。また、2008年には渋谷の名画座にて再上映が行われ、長い年月を経てなお注目される存在となっています。

キャストと制作スタッフ

主要なキャストには、警視役の柴俊夫や、吉野年男などが名を連ねています。制作スタッフには企画の上住忠彦をはじめ、プロデューサーや監督など様々な人々が関与しました。特に、音楽や映像のクオリティは当時の映画界の水準を反映しており、その影響は現在に至るまで語られています。

総括

『暗号名 黒猫を追え!』は単なる映画作品にとどまらず、政治的な議論や国民の認識に影響を与える存在として、今なお語り継がれています。スパイ防止法に対する理解を広める手段としての映画の役割と、その影響の大きさを改めて考えさせられる作品です。

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