暗闇の中の猫

『暗闇の中の猫』

『暗闇の中の猫』は、著者横溝正史による短編推理小説で、金田一耕助シリーズの一作として知られています。この作品は1946年に発生した銀行強盗事件を中心に展開され、金田一耕助と等々力警部が初めて対面したことでも注目されています。最初は1947年に発表された『双生児は踊る』を原型とし、1956年に現在のタイトルに改められました。

概要

この物語は、東京に新たに移り住んだ著者が取り扱った最初の事件として語られています。しかし、この作品で扱われた事件は、著者が東京で初めての事件であるとは限らないことが示唆されており、過去に起こった出来事に対する興味を引き起こします。1956年の改稿により現在の形になったこの作品は、もともと『双生児は踊る』という題名で連載されたものであり、二つの作品の関連性も深いものがあります。

あらすじ

1946年11月、東銀座で発生した銀行強盗事件。2人の犯人は逃走中にキャバレー『ランターン』に逃げ込みました。しかし、その場で遭遇した警官が目にしたのは、拳銃で撃たれて倒れた犯人の姿でした。強奪された70万円は行方不明で、犯人の一人は死亡し、もう一人の佐伯誠也は記憶喪失となります。佐伯は不思議な言葉を口にし、「暗闇の中に何かいる。ネコだ！」という脳裏に残る印象が何を意味するのか、事件の鍵となるのです。

当初、警察は犯人たちが仲間割れで相打ちになったと考えていましたが、70万円の行方が不明なことから、第三者が関与している可能性が浮かび上がります。1947年、警察は佐伯を現場に連れ戻し、何かを思い出させようと試みます。キャバレー『ランターン』は、70万円の噂で賑わっていましたが、突如として停電に見舞われます。その瞬間、佐伯は再び「ネコだ！」と叫び、直後に何者かによって射殺されてしまいます。

この証人の死に怒りを覚える等々力警部は、店内にいた全ての客と従業員に対して徹底的な身体検査を行いますが、特に怪しいものは見つかりませんでした。その後、いかに犯人がランターンの中に潜んでいるかを探る手がかりを求め、店の前にいた大道易者の天運堂が「犯人は暗闇の中でも目が見える存在だ」と示唆し、事件の真相に一歩近づくきっかけを提供します。

主な登場人物

• - 金田一耕助: 私立探偵として知られる主人公。
• - 等々力大志: 警視庁の警部、事件の捜査を指揮。
• - 佐伯誠也: 銀行強盗の一人、記憶を失いながら事件に巻き込まれる。
• - 天運堂: ランターン前で営業する無名の易者、重要な情報を提供。
• - 寺田甚蔵: キャバレーのマスター、事件の中心的な役割を果たす。

結論

『暗闇の中の猫』は、巧妙に描かれた事件と社会状況を背景に、金田一耕助の探偵としての資質を引き立てる魅力的な短編推理小説です。横溝正史の筆致が光るこの作品は、読者を最後まで釘付けにし、推理小説の真髄を体現した傑作です。

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