書道展

書道展とは

書道展（しょどうてん）は、書による芸術作品を一堂に集めて展示する催しを指します。書展（しょてん）や書作展（しょさくてん）とも呼ばれることが一般的です。その形式は多岐にわたり、特定の書道団体が会員や一般から広く作品を募集する公募展や、特定のテーマに基づいて企画される企画展、一人の書家が自身の作品を発表する個展、故人の作品を展示する遺墨展などが含まれます。

開催場所も美術館や公共の展示施設が中心ですが、2000年代に入ってからはインターネット上でのオンライン開催も見られるようになりました。

日本における書道展の歴史

近代以降の日本では、昭和時代に入ると多くの書道団体が組織され、書道活動は組織的な基盤を持つようになります。こうした団体が主催する大規模な展覧会は、書道が単なる技芸や習字から、近代芸術としての地位を確立し、一般社会に認知される上で重要な役割を果たしました。

戦前

日本で初めて大規模な書道展を企画・開催したのは、1924年（大正13年）に結成された日本書道作振会です。この団体は、当時の著名な書家だけでなく、書に関心を持つ政財界や軍の関係者までを含む広範な組織でした。その主要な活動として、年一回の大規模な展覧会を開催しました。当時、書道界は小規模な団体が点在し、開催される展示も限定的だったため、日本書道作振会の結成と大規模展の試みは、書道界全体の活性化と組織化に向けた画期的な出来事として大きな意義を持ちました。しかし、設立から数年で会員の脱退が相次ぎ、残念ながらこの団体は崩壊してしまいます。

日本書道作振会の活動とその終焉は、その後の書道界に教訓を残しました。その経験を基に、昭和初期に泰東書道院、東方書道会、大日本書道院という三つの有力な団体が設立されました。これらの団体は、当時の書道界を牽引する存在となり、それぞれが大規模な展覧会を開催することで、書道界の組織的な発展に大きく貢献しました。この三つの団体の活動が始まった時期をもって、近代的な書壇が誕生したとされています。

戦後

第二次世界大戦後、日本の書道界は再び組織化の動きを見せます。1946年には、当時の多くの書家が結集して日本書道美術院が結成されました。この団体は美術館で二度の展覧会を開催しましたが、その後分裂に至りました。日本書道美術院の分裂を経て、新たに日本書作院などが組織されることになります。

現代日本の主要な書道展

現代の日本の書道界には、多くの書道団体が存在し、様々な規模や性格を持つ書道展が開催されています。その中でも特に影響力の大きいものとして、以下のような展覧会が挙げられます。

• - 日展（日本美術展覧会 書部門）
• - 読売書法展
• - 毎日書道展
• - 産経国際書展
• - 日本書芸院展
• - 創玄展
• - 日本書道院展
• - 謙慎書道会展
• - 新興書道展
• - 書海社展
• - 東方書展
• - 日本書鏡院展

書壇における書道展の位置づけ

現代の日本の書道界において、書道展での入選や受賞といった実績は、書家自身の評価や地位を確立する上で極めて重要視されています。日本芸術院による顕彰などと並んで、書家の芸術的な実力や活動の証と見なされており、所属する書道団体内での会員資格の昇格や役員の推薦基準としても用いられています。

特に、日展は日本の総合芸術展の中でも長い歴史を持ち、書道部門においても最高の権威を持つ展覧会と広く認識されています。そして、その下に読売書法展や毎日書道展といった大規模な公募展が位置づけられ、さらにその足がかりとなる地方や特定の流派における重要な展覧会が存在するという、いわゆる「日展系」と呼ばれるヒエラルキー構造が形成されています。

こうした書道界の構造は、長年の経験を持つ書家が審査員などを務めることで、若手の育成や書芸術の振興を支える側面がある一方で、所属する団体や師事する作家との関係性が審査結果に影響したり、入選後に慣例的な謝礼を支払うといった、組織的な支援や特有の慣習が存在するという指摘もなされています。これに対し、1984年に発足した産経国際書展は、既存の大規模展に見られた「ボス的作家による縦割り支配や金銭が絡む審査」といった批判を踏まえ、特定の流派や団体に偏らない公平でクリーンな審査を理念として掲げています。

近年の活動規模を示す例として、令和2年度の「改組 新 第7回日展」の書部門における入選作品数は1,069点でした。また、令和元年に行われた新聞社主催の大規模公募展では、毎日書道展に28,074点、読売書法展に21,294点、産経国際書展に6,157点の作品が出品されており、多くの書道愛好家や書家が書道展を創作発表の場として積極的に活用していることが分かります。

書道展は、作品を展示し、鑑賞する場であると同時に、書道界の歴史や構造、現代の活動状況を知る上で欠かせない存在と言えるでしょう。

参考文献：
* 『日本と中国の書史』 - （社）日本書作家協会発行 木村卜堂著 - 1971年

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