最小発育阻止濃度

最小発育阻止濃度（MIC）とは

最小発育阻止濃度（さいしょうはついくそしのうど、英: Minimum Inhibitory Concentration, MIC）とは、微生物の成長を阻止するために必要な抗微生物物質の最低濃度を指します。これは通常、微生物の実験室での感染症診断や、新たな治療薬の評価において非常に重要な役割を果たしています。MICは、抗微生物物質の効果を理解するための基本的な手法として広く使用されています。

MICの測定方法

MICは、特定の細菌株に対して抗菌薬を作用させ、18時間以上培養することによって測定されます。この過程で、培養液に混濁が見られない場合、その時の抗菌薬濃度が微生物の発育を阻止できていると判断されます。混濁がない最小の抗菌薬濃度がMICとして記録されます。ただし、MICは発育の阻害を確認する指標に過ぎないため、微生物の完全な死滅を確認するには最小致死濃度（MBC）を測定する必要があります。

MICは小さいほど、少ない濃度で微生物の成長を抑えることができますが、注意が必要です。生菌数が少ない場合、混濁が見られないからといって微生物が全て死んでしまったという保証はありません。薬剤が低下すれば、再び増殖する可能性も存在します。またMICが小さくても、薬剤や菌種によって異なるブレイクポイントがあるため、臨床での効果は一概に評価できません。MIC値はPK/PDパラメータ（薬物動態/薬力学）としても用いられ、%T>MIC、Cmax/MIC、AUC/MICなどが算定に含まれます。

ブレイクポイントの重要性

MICの評価は、米国の臨床検査標準協会（CLSI）の基準に従って行われます。CLSIは、抗菌薬や特定の菌種ごとに基準値を設定しています。測定したMICがこの基準値よりも低ければ「感受性（S）」、高ければ「耐性（R）」と判定されます。この境界となる抗菌薬濃度を「ブレイクポイント」と呼びます。

ただし、CLSIのブレイクポイントは主に米国人を対象にしており、他の要因、例えば抗菌薬による臓器への移行、静菌作用と殺菌作用の濃度の差なども考慮されていません。そのため、臨床での具体的な効果については慎重に評価する必要があります。日本では、これらの問題を考慮し、日本化学療法学会が臨床的なブレイクポイントを独自に設定しているため、特に日本国内での治療においてはこの基準が重要視されています。これにより、抗菌薬の特性や臓器への移行能力、体内での薬物動態を考慮した上で、より正確な治療が可能となります。

まとめ

最小発育阻止濃度（MIC）は、抗微生物物質の効果を測定するための重要な指標であり、診断や新薬の効果検証において不可欠です。MICの測定とその解釈について理解を深めることで、臨床現場でのより適切な抗菌治療に寄与することが期待されています。

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