最後の誘惑

映画『最後の誘惑』について

1988年に公開された映画『最後の誘惑』（原題: The Last Temptation of Christ）は、アメリカの著名な監督マーティン・スコセッシによる作品です。この映画はニコス・カザンザキスの小説『キリスト最後のこころみ』を原作としており、イエス・キリストの人間的な側面に焦点を当てた内容で、多くの議論を呼び起こしました。

ストーリーの概要

この映画は、キリストを単なる宗教的な象徴としてではなく、深刻な内面の葛藤を抱える人間として描いています。物語の核心にはユダの裏切りがあり、これが神によって与えられた使命であるとし、イエスの人生の選択を問いかけます。キリストが十字架にかけられる場面では、彼はマグダラのマリアと結婚して普通の人間としての人生を送る誘惑に直面します。このため、映画はキリスト教の伝統的な教義と対立し、非常に物議を醸しました。

主なキャスト

映画には、ウィレム・デフォーがイエス・キリスト役を演じ、ハーヴェイ・カイテルが使徒ユダ、バーバラ・ハーシーがマグダラのマリアを演じています。また、デヴィッド・ボウイがピラト総督役を演じるなど、豪華なキャストが揃っています。その他にも、アンドレ・グレゴリー（洗礼者ヨハネ）、ヴィクター・アルゴ（使徒ペテロ）、ハリー・ディーン・スタントン（サウロ）など、多彩な役者が出演しています。

制作背景

撮影は1987年9月にモロッコで開始され、62日間にわたって行われました。スコセッシ監督は、聖書の考古学的な文献を徹底的に研究し、またレンブラントやボッシュの絵画を参考にして映像を創り上げました。特にマリアの刺青に関する美術資料も彼自身が探し出したといわれ、このように想像力豊かにイエスの時代を再現しました。

音楽と論争

映画のサウンドトラックは、ミュージシャンのピーター・ガブリエルが担当し、『パッション』というタイトルでリリースされました。音楽的な要素も作品全体の雰囲気に寄与しています。

このフィルムのタイトルは、その内容によって多くの論争を引き起こしました。特に、キリストがマグダラのマリアと結婚し、普通の人間として生きるという解釈が、一部のキリスト教団体から強い反発を受けました。抗議が広がり、一部の地域では上映反対運動が起こるなどしました。

まとめ

『最後の誘惑』は、宗教、哲学、人間性を深く掘り下げた作品として、映画史において重要な位置を占めています。スコセッシの大胆なアプローチは、キリストに対する新たな視点を提供し、観客に深い考察を促しました。物議を醸したその内容は、今もなお多くの人々の心に残ることでしょう。

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