最後の銃撃

最後の銃撃：1880年代アメリカのバイソン狩りと人間のドラマ

『最後の銃撃』（原題：The Last Hunt）は、1956年に公開されたアメリカ合衆国の西部劇映画です。かつて数千万頭いたとされるアメリカバイソンが、1880年代にはわずか数千頭にまで激減していました。この映画は、そんな時代に野牛狩りに身を投じる人々の生き様を、壮大な自然と人間の心の葛藤を通して描き出しています。

監督はリチャード・ブルックス、製作はドア・シャリ―、音楽はダニエル・アンフィシアトロフ、撮影はラッセル・ハーランと、ハリウッドを代表するスタッフ陣が結集。ミルトン・ロットの同名小説を原作に、ブルックス自身の手による脚本で映画化されました。主演はロバート・テイラー、スチュワート・グレンジャー、ロイド・ノーランら実力派俳優たちが務め、映画に重厚なリアリティを与えています。

物語の中心人物は、かつて名ハンターとして名を馳せたサンディです。彼はバイソンへの深い愛情を持ちながらも、彼らの群れが自分の牧場を荒らすことに頭を悩ませていました。そんな彼のもとに、冷酷で野心的な流れ者チャーリーが現れ、野牛狩りに誘います。当初は拒否したサンディでしたが、チャーリーに命を救われた恩義から、狩りに同行することになります。

やがて、彼らの狩猟集団には、野牛の皮剥ぎの名人ウッドフートや、白人社会への参加を夢見る混血児ジミーも加わります。一行は、広大なダコタ地方を移動しながら、バイソンの群れを追いかけます。しかし、彼らの間には次第に亀裂が生じ始めます。チャーリーは、野蛮で自己中心的。一方でサンディは、バイソンへの敬意と、人間としての良心を持ち合わせています。この対照的な二人が、物語の中心となる衝突を生み出します。

物語は、様々な事件によって加速していきます。盗まれた驢馬の事件をきっかけに、チャーリーは冷酷な一面を露呈し、仲間たちを殺害。生き残った女性を皮剥ぎの助手として受け入れます。バイソンの中でも神聖視される白い個体を、サンディの反対を押し切ってチャーリーが射殺する場面は、二人の対立をさらに深めます。さらに、ジミーの幼馴染との決闘に発展し、チャーリーは少年を殺害。彼の残虐な行動は、周囲の人々を恐怖に陥れます。

秋になり、毛皮を売りに出したサンディは引退を考えていましたが、女性からの好意もあり、狩りを続けることを決意します。しかし、野牛の移動に伴い、キャンプを移転する際に、チャーリーは精神的に錯乱状態に陥ります。とうとうサンディは、仲間たちと協力して女性とともにキャンプからの脱出を図ります。その後、チャーリーはウッドフートを殺害、サンディは女性とともに町へと逃れようとしますが、ジミーの居留地への帰還願望から、一時的に洞穴で夜を明かすことになります。

そこで、チャーリーに追い詰められたサンディは、ジミーに家畜を託して逃がしたのち、女性と共に決闘に臨もうとしますが、吹雪のため決闘は延期されます。しかし、錯乱したチャーリーは、待ち伏せ中に凍死してしまい、翌朝、サンディと女性が彼の遺体を発見するところで物語は幕を閉じます。

『最後の銃撃』は、単なる西部劇にとどまらず、アメリカ開拓時代の過酷な現実と、人間の欲望、そして自然との調和という普遍的なテーマを描いた作品です。壮大な自然風景と、人間ドラマの緊迫感あふれる展開は、見る者の心に深い感銘を与えるでしょう。

もう一度検索