最終手段の書簡

最終手段の書簡とは

最終手段の書簡（さいしゅうしゅだんのしょかん）は、イギリスの核戦略における重要な文書であり、イギリス海軍の戦略ミサイル原子力潜水艦の艦長に宛ててイギリス首相が記した書簡です。この書簡は、国が核攻撃を受け、政府が機能しなくなった場合に、艦長がどのような行動を取るべきかを指示する重要な役割を果たします。

書簡の重要性

この書簡が必要とされる背景には、イギリスが核攻撃に対して他国に比べ非常に脆弱な立場にあることがあります。もしもこの命令が実行される事態に至った場合、それはイギリス政府にとって最後の公式な行動となる可能性があり、そのために書簡は非常に慎重に取り扱われます。また、最終手段の書簡は、イギリスの4隻の核潜水艦全てに同じ内容で保管されており、艦長たちはこれに基づいて行動することが求められます。

書簡の作成プロセス

新首相が就任すると、最初に国防参謀総長からトライデント・ミサイルが引き起こしうる被害について説明を受け、その後4通の書簡を手書きで作成します。この書簡は密封され、各潜水艦に届けられます。この新しい書簡が確実に配布されると、前任の首相によって書かれた書簡は開封されることなく破棄されます。なお、この書簡は新首相が国防参謀総長から説明を受けてすぐに用意しなければならないわけではなく、新しい書簡が届くまでは前任者の書簡が有効とされています。

手順と確認プロセス

万が一、核攻撃により首相および代替意思決定者が全員職務を果たせなくなった場合、潜水艦艦長は最終手段の書簡を開封するかどうかを慎重に判断しなければなりません。1983年の時点では、艦長はイギリスに対する核攻撃が発生した場合や、イギリス海軍の通信が4時間途絶した場合に、艦隊司令長官宛の文書を開封することとなっていました。現在の確認手順には、様々な通信信号の傍受が含まれており、特にBBC Radio 4の放送が受信できるかどうかが重視されているとされています。

選択肢と内容の秘匿性

書簡には機密性があり内容は公開されていませんが、首相が艦長に与える命令の選択肢は、基本的に以下の4つから成ります：
1. 報復しろ。
2. 報復するな。
3. 自らの判断で行動しろ。
4. 可能であれば同盟国の指揮下に入れ。

この同盟国として特にオーストラリアやアメリカ合衆国が挙げられています。実際に書簡が開封される事態に至らない限り、どの選択肢が文書に記載されているかは、書簡を作成した首相のみが知ることとなります。

フィクションにおける描写

最終手段の書簡は、フィクションや演劇でも取り上げられており、デイヴィッド・グレイグによる2012年の戯曲『最終手段の書簡』は、この書簡が引き起こす結果やその逆説をテーマにしています。また、2014年のテレビドラマ『ザ・ゲーム』では、KGBのスパイが書簡の内容を探ろうとする様子が描かれています。これらの作品は、核の脅威やその背後にある倫理的問題に光を当てるものとなっています。

このように、最終手段の書簡は単なる文書に留まらず、核兵器の使用や国際関係の重要性を伝える非常に深い意味を持った存在なのです。

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