最終退行

最終退行：あらすじと解説

池井戸潤の長編経済小説『最終退行』は、2002年から2003年にかけて連載され、2004年に単行本化、その後文庫化もされた人気作品です。東京第一銀行羽田支店の副支店長である蓮沼鶏二を主人公に、銀行内部の不正や権力闘争、そして歴史的な謎に満ちた物語が展開します。

物語は、1978年のM資金詐欺事件から始まります。それから24年後、蓮沼は、不正を働く会長や支店長らの上層部、そしてその陰に潜む巨大な陰謀に巻き込まれていきます。

主要登場人物

蓮沼鶏二: 主人公。羽田支店の副支店長。多忙な業務と不正に憤りを感じ、上層部に反旗を翻す。
久遠和彌: 東京第一銀行会長。M資金詐欺事件にも関与しており、不正を繰り返す。
谷恭介: 羽田支店長。蓮沼と対立し、不正を働く。
塔山諭史: 羽田支店の業務課長代理。不正行為に関与するも、その後出向を命じられる。
滝本瞬: 蓮沼の同期。久遠の腹心として動き、裏で糸を引く。
新川清: 東京海洋開発社長。沈没船から財宝を引き上げるトレジャーハンター。

物語の展開

蓮沼は、東京海洋開発への融資に不正が見られることを察知し、調査を開始します。その過程で、新川がトレジャーハンターであること、そして銀行の上層部が巨大な裏金に関与していることを突き止めます。

物語は、蓮沼が不正を暴こうとする過程で、M資金、沈没船の財宝、そして銀行の裏金といった、複数の謎が絡み合い複雑に展開していきます。蓮沼は、上層部の圧力や妨害を受けながらも、真相解明に挑みます。

物語のテーマ

『最終退行』は、単なる銀行ミステリーにとどまらず、現代社会における不正や権力闘争、そして個人の葛藤を描いています。蓮沼の奮闘は、正義を貫くことの難しさ、そして不正と闘うことの大切さを私たちに問いかけています。また、M資金という歴史的な謎や、沈没船の財宝、そして銀行の裏金といった要素が物語に深みを与え、読者の興味を引きつけます。

オーディオブック

本作品は、森川直樹氏による朗読オーディオブックも配信されており、音声を通して物語の世界観を堪能できます。

全体像

『最終退行』は、銀行を舞台に、複雑に絡み合った謎と、正義と不正の闘いを描いた社会派ミステリーです。過労死寸前の銀行員が、巨大な権力と対峙する姿は、現代社会における様々な問題を想起させ、読者に深い印象を与えます。 M資金という未解決事件や、実在のトレジャーハンターであるメル・フィッシャーを思わせる登場人物など、歴史的、社会的な要素も盛り込まれ、物語に現実味を与えています。 最終的に蓮沼がどのような選択をし、どのような結果を迎えるのか、最後まで目が離せない作品です。

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