月の夜汽車

月の夜汽車 (つきのよぎしゃ)

美空ひばりが1975年9月1日にリリースしたシングル「月の夜汽車」は、彼女の代表作の一つとして知られています。このシングルは、A面に「月の夜汽車」、B面に「風の流れに」を収録しており、どちらの楽曲もシンガーソングライターの岡林信康が作詞・作曲を手掛けています。

楽曲の背景

「月の夜汽車」と「風の流れに」は、岡林信康が作詞作曲した作品で、1975年12月16日に中野サンプラザで開催された岡林のコンサートで、美空ひばりが飛び入り参加し、サプライズで「風の流れに」を歌唱したというエピソードがあります。このコンサートは、岡林にとって約4年半ぶりの単独コンサートであり、終盤にひばりが飛び入り参加するという劇的な展開に、会場は大きな興奮に包まれました。

レコーディング秘話

レコーディング時、岡林が立ち会った際、ひばりは楽譜ではなく歌詞の紙に矢印を書き込んでいました。楽譜が読めないひばりは、独自の工夫で楽曲を理解していたのです。岡林がその理由を尋ねると、ひばりは恥ずかしそうに「楽譜が読めないから、こうして読んでるの」と答えました。岡林も楽譜が読めないことを明かすと、ひばりは「ウソー！私と一緒ね」と笑顔を見せたそうです。このエピソードは、二人の親近感を象徴するエピソードとして語り継がれています。

レコーディング後、二人は原宿で夕食を共にし、その後ひばりに「ウチにきて飲まない?」と誘われた岡林は、ひばりの自宅である目黒区青葉台の邸宅を訪れました。そこでは、レコード会社関係者と庭で相撲を取り、ひばりに「芝生が傷む」と注意されたり、目の前で「越後獅子の唄」を歌ってもらい、歌唱指導まで受けたという、貴重な交流が記録されています。

岡林信康の転機

当時、岡林は京都の山村に移住し、農業に専念していましたが、ひばりに励まされたことがきっかけとなり、中野サンプラザでのコンサート開催を決意しました。コンサート当日、ひばりは心配で見に来ていたのですが、その熱気に触発され「私も歌いたい」と言い出し、急遽ステージで「風の流れに」を歌いました。それに対し、岡林も負けじと歌ったものの、歌詞を忘れてしまったそうです。この出来事をきっかけに、岡林はひばりの歌を聴き始めるようになったといいます。

幻の音源の発見

2009年、ひばりの20回忌にあたる年に、岡林が保管していたカセットテープが奇跡的に発見されました。このテープには、ひばりと岡林のMCも含めたコンサートの模様がノーカットで収録されており、CD化されました。これは、二人の貴重な交流を今に伝える、大変貴重な音源となっています。

収録曲

1. 月の夜汽車
2. 風の流れに

両曲とも作詞・作曲は岡林信康、編曲は佐伯亮が担当しました。

関連事項

* 1975年の音楽

このシングルは、美空ひばりの歌唱力と岡林信康の楽曲の魅力が融合した作品であり、二人の交流を物語る数々のエピソードとともに、長く人々に愛され続けています。

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