有効保護率

有効保護率についての詳細

概要

有効保護率（Effective Rate of Protection）は、国内市場における産業保護の程度を示す指標であり、最終財に対して課される関税だけでなく、その生産に用いる中間財にかかる関税も考慮して計算されます。この概念は、保護政策を評価するために非常に重要であり、実効保護率、付加価値保護率、絶対保護率といった複数の名称で知られています。

この指標は、特に生産者が最終的に得られる付加価値に焦点を当てており、関税の変更によってどの程度の影響を受けるかを明らかにします。具体的には、最終財への高い関税が、中間財への低い関税と組み合わさることで、最終財の生産者が国内で生成する付加価値が向上するという理論から成立しています。

数式とその意味

有効保護率の計算には、以下の数式が用いられます。最終財「i」の実効関税率（ERPi）は、次のように表されます。

$$ERPi = \frac{v_i' - v_i}{v_i}$$

ここで、$v_i'$は関税率変更後の付加価値、$v_i$は変更前の付加価値を意味します。この式は有効保護率が「付加価値保護率」とも呼ばれる理由を示しており、付加価値の変化率を求めることにより、生産者への経済的影響を数値化しています。

また、次の式も重要です。

$$ERPi = \frac{ti - \sum (a_{ik} * tk)}{1 - \sum a_{ik}}$$

ここで、$t_i$は最終財への関税、$a_{ik}$は中間財の投入額の割合、$t_k$は中間財の関税率を示します。分子は最終財への関税から中間財に課される加重平均関税を引いたもので、分母は最終財の付加価値率を示しています。これにより、実際の付加価値の変化を測ることができます。

歴史的背景

有効保護率という概念は、1890年にフランク・タウシッグによって初めて取り上げられ、その後、1956年にスウェーデンで具体的な政策に利用されました。1960年代には、マックス・コーデン、ベラ・バラッサ、ハリー・G・ジョンソンの理論的な研究が影響を与え、産業分析の発展に寄与しました。このように、かつての研究は現代の貿易政策に深い影響を与えています。

資源再配分の指標としての活用

有効保護率は、関税政策変更の影響を測る指標としても使われており、国内産業間での資源の再配分を予測するための基準とされます。正しい条件が整っている場合（例：生産関数の特性や市場の競争性）、この指標は資源の流入と流出を示すための有効な手段となります。

問題点

ただし、有効保護率には限界も存在します。高い関税率を持つ産業ほど有効保護率が機械的に高くなる傾向があり、実際の保護度合を誤認させることがあります。そのため、各産業の実際の運営状況や市場の動向を考慮しなければ、誤った判断を招くリスクがあります。

結論

有効保護率は、貿易政策の中心となる指標の一つとして、産業の保護状況を理解するために活用されます。それにより、政策決定者は適切な政策立案を行い、国内経済への影響を最小限に抑えるための戦略を練ることができます。

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