望み (雫井脩介の小説)

小説『望み』について

概要

『望み』は、雫井脩介が手掛けた長編小説であり、2016年1月号から7月号にかけて電子小説誌『文芸カドカワ』に連載された作品です。その後、同年9月にKADOKAWAから単行本として刊行され、2019年に文庫版も発売されました。本作は、第七回山田風太郎賞の候補作に挙げられ、2016年の「週刊文春ミステリーベスト10」国内部門で第9位を獲得するなど、高い評価を受けています。また、2020年には映画化もされ、多くの人々に影響を与えました。

執筆背景

雫井は、これまでの作品において家族をテーマにしてきましたが、今回は特に家族心理を探ることに焦点を当てています。編集者からの要望を受け、少年犯罪に顕著なトラブルから発展する事件を描く中で、遺族が抱える複雑な心理を掘り下げることがテーマになりました。「果たして自分の子供が加害者なのか、被害者なのか、どのように報道に接するのか」といった深いテーマを追求することで、物語がより深みを増しています。

あらすじ

埼玉県戸沢市に住む建築家の石川一登と校正者の妻、貴代美は、高校生の息子・規士と中学生の娘・雅と共に幸せな日々を送っています。しかし、息子の規士は怪我を理由にサッカー部を退部した後、徐々に不安な行動を見せるようになります。夏休みに突入するころには、外泊の頻度が増し、帰宅時にはしばしばあざを持っていることもあり、両親の心に不安の影が差し込んでいきました。

シルバーウィークの連休中、規士が外泊から帰らないことを心配していた両親の元に、戸沢市で少年の遺体が発見されたとのニュースが届きます。亡くなったのは倉橋与志彦という高校生で、規士と親交があったため、警察が事情聴取に訪れることになります。しかし、貴代美は記者から聞いた情報によって、行方不明の少年が規士を含めて3人いることを知りショックを受けます。規士が関与しているのではないかという不安に苛まれる貴代美。一方、一登は、息子が無実であることを信じ続けます。

この事件を通じて、加害者家族としてメディアに晒される石川家は、取材や嫌がらせに悩まされながらも、親としての愛情と信念に揺れ動きます。果たして規士は本当に加害者なのか、それとも何かしらの被害者であるのか。親から見える複雑な感情や葛藤が、物語を通して描かれています。

登場人物

• - 石川一登: 建築家で理屈っぽい性格。息子が加害者でなければいいと願う。
• - 石川貴代美: 一登の妻で心配性。息子が加害者という可能性に恐れを抱いている。
• - 石川規士: 高校生の息子で、最近は外泊が増えており、両親を心配させている。
• - 石川雅: 中学生の娘で、将来の進路に向けて勉強中。
• - 倉橋与志彦: 事件の被害者で規士の友人。彼の死が物語の中心となる。

書誌情報

本作は2016年に単行本、2019年には文庫本が出版され、映画化もされています。映画は2020年に公開され、物語の背景が秋から冬に変更されて展開されています。また、オーディオブックも2020年に配信開始され、朗読は乃神亜衣子が担当しています。

『望み』は、家族愛や人間関係、思春期の心の葛藤が深く描かれた作品であり、思わず考えさせられるテーマが多く含まれています。

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