朝野熙彦

日本の経営学者、朝野 熙彦（あさの ひろひこ）氏は、マーケティング・サイエンス及びマーケティング・リサーチを専門分野としています。

経歴

朝野氏は1969年に千葉大学文理学部を卒業後、マーケティング・リサーチ会社の日本リサーチセンターでのコンサルティング業務、鉄道労働科学研究所での勤務を経て、1980年に埼玉大学大学院政策科学研究科を修了しました。実務での経験と並行して学術的な素養を深めました。

大学教員としては、1996年4月に専修大学商学部の講師に着任。同大学で教授を務めた後、2001年4月に東京都立大学教授、組織再編後の2005年4月からは首都大学東京教授として教鞭を執りました。この間、2006年4月から2015年3月にかけては、多摩大学大学院経営情報学研究科の客員教授も務めています。現在は、中央大学大学院戦略経営研究科の客員教授であり、学習院マネジメントスクールの顧問も務めるなど、長年にわたり後進の育成と実務家向けの教育に携わっています。

研究分野・業績

朝野氏の専門は、統計学や経営数学といった数量的な手法をマーケティングに応用するマーケティング・サイエンスと、その基礎となるマーケティング・リサーチです。市場データの分析、消費者行動の理解、新商品開発、広告・プロモーション効果の測定など、データに基づいた意思決定のための理論と実践を探求しています。多変量解析、共分散構造分析、コウホート分析、コンジョイント分析といった様々なデータ分析手法に精通し、その応用研究を進めています。

学術論文では、これらの分析手法を用いた実証研究や方法論的考察を行っています。例えば、消費者行動の予測モデル構築、マーケット・セグメンテーションの手法、特定の分析手法における課題などに関する論文を発表しており、計量的なアプローチによるマーケティング研究の発展に貢献しています。

著作

朝野氏は、専門分野に関する多くの著作を世に送り出しています。特に、難解と思われがちな数量的分析手法や経営数学を、文系の読者にも分かりやすく解説した入門書が高い評価を得ています。『文科系でもいきなりわかる行列・ベクトル入門』シリーズや、『いきなりわかる経営数学の基礎』、『入門多変量解析の実際』といった著作は、この分野を学ぶ多くの人々に利用されています。

また、専門家向けには、『マーケティング・リサーチ工学』、『マーケティング・シミュレーション』、『最新マーケティング・サイエンスの基礎』といった体系的な解説書を執筆。さらに、実務家向けにマーケティング・リサーチの計画・実施方法、ビッグデータ活用、ブランド評価、データ分析ソフトRやPythonを用いた実践的な分析手法に関する著作も多数あります。近年では、ベイズ統計学やディープラーニングといった比較的新しい分野の入門書も手掛けるなど、常に研究テーマと著作活動の幅を広げています。共著も含め、その著作はマーケティングにおけるデータ分析の理論と実践を広くカバーしています。

受賞

2002年には、その著作活動における貢献が認められ、日本感性工学会出版賞を受賞しています。

朝野熙彦氏は、実務経験と学術研究に基づいた深い知見を持ち、特にデータ分析を重視するマーケティング研究の第一人者として、教育、研究、著作活動を通じて日本の経営学界に大きな貢献を果たしています。

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