朝鮮民主主義人民共和国の高速道路

北朝鮮の高速道路

北朝鮮における高速道路は、その独特な社会情勢を反映した特徴を持っています。自動車の所有が厳しく制限され、ごく一部の特権階級を除いて国民は自家用車を持つことができません。運転免許の取得や自動車の購入には賄賂が必要とされるなど、一般市民にとっては非常にハードルが高い状況です。燃料不足も深刻で、木炭自動車が走行するほどです。そのため、国内の乗用車はごく少数に留まり、長距離移動は鉄道や長距離バスが主流となっています。

整備状況

このような状況から、北朝鮮の高速道路整備は大きく遅れており、総延長は2014年時点で729kmに過ぎません。これは、韓国の高速道路総延長の2割にも満たない数値です。また、2000年から2014年の間に北朝鮮が建設した高速道路はわずか5kmであるのに対し、韓国は約2,000kmも建設しており、その差は歴然としています。

北朝鮮の高速道路は交通量も非常に少なく、個人輸送業の車両やツアーバスがほとんどで、自家用車は見かけることがありません。通行料金は基本的に無料ですが、平壌-元山観光道路では有料化されています。制限速度は設定されていない区間や100km/hといった指定区間がありますが、路面状況が悪いため、速度を出しすぎると危険です。

路面状況と安全対策

北朝鮮の高速道路は、路面に穴が開いている箇所が多く、補修も間に合っていないのが現状です。歩行者や動物が侵入することも容易で、非常に危険な状態です。高速道路に歩道は併設されておらず、冬場に路面が凍結すると、所要時間が倍以上になることもあります。

2019年の南北共同調査では、平壌-開城高速道路の老朽化が深刻であることが判明しました。岩盤地帯を削って作られた区間では落石や崩落の危険が高く、橋梁には亀裂が入り、鉄筋が露出している箇所も多数あります。トンネル内は照明が不十分で、防災設備も皆無です。道路舗装も薄く、冬の寒さに耐えられないなど、様々な問題点が指摘されました。

さらに、ジャンクションやインターチェンジは設計基準を満たしておらず、道幅が狭く事故が起きやすい構造になっています。唯一の休憩所（パーキングエリア）にも、椅子などの休息設備がありません。

建設状況

高速道路の建設には、軍人だけでなく、犯罪者や政治犯といった収容所の人々や地域住民が強制的に動員されています。建設現場は劣悪な環境で、十分な安全対策も講じられていないため、労働災害が多発しています。無理な日程で突貫工事が行われた結果、手抜き工事や大事故に繋がることもあります。

過去には、突貫工事中に橋が崩落し、数百人もの労働者が死亡する事故も発生しています。

アジアハイウェイ

北朝鮮にはアジアハイウェイが3路線選定されており、1号線と6号線には一部の高速道路が指定されています。

まとめ

北朝鮮の高速道路は、その整備状況や安全面において、多くの問題を抱えています。路面状況の悪さや、安全対策の不備、強制労働による建設現場での事故など、早急な近代化が求められています。

写真一覧

平壌-開城高速道路の写真

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