木下亀城

木下亀城：黒鉱鉱床研究のパイオニアとその多彩な人生

木下亀城（1896年6月28日-1974年1月14日）は、日本の鉱床学、地球科学分野における重要な貢献者の一人です。福井県に生まれ、東京帝国大学理学部地質学科を卒業後、理学博士の学位を取得。九州大学名誉教授の称号も得ています。

彼の研究人生は、黒鉱鉱床の研究に深く関わっています。東京帝国大学在学中には、平林武教授の指導の下で黒鉱鉱床の研究に着手、これが彼のライフワークとなります。卒業後は農商務省鉱務技手として仙台に赴任し、東北地方の金属鉱床に関する研究に従事。その後、福岡鉱山監督局を経て商工省地質調査所に勤務し、小坂や花輪などの地質図幅作成に携わりました。これらの経験を通して、黒鉱鉱床の生成メカニズムに関する研究を深め、特に「黒鉱鉱床アルカリ性溶液交代説」は大きな注目を集め、彼の名を一躍有名にしました。

1929年にはアフリカとヨーロッパへ出張し、国際的な視野も養いました。1931年には、黒鉱鉱床に関する研究成果により理学博士の学位を取得。1933年には九州帝国大学工学部教授に就任し、後進の育成にも力を注ぎました。1960年に九州大学を停年退職後は、日本大学教授として教鞭をとり続けました。

研究活動においては、約260編にも及ぶ論文を発表し、20冊を超える著書を執筆しました。彼の著作には、『鉱床学』（上中下巻）、『原色鉱石図鑑』、そして鉱物に関する専門用語集である『鉱物和名辞典』『鉱物学名辞典』など、現在でも鉱物学、地球科学分野の研究者や学生にとって貴重な参考文献となっています。さらに、湊秀雄氏、小川留太郎氏、篠原邦彦氏らとの共著も多く、その内容は多岐に渡ります。特に『日本の郷土玩具』は、彼の郷土玩具への深い愛情が感じられる一冊です。

学術的な業績に加え、木下亀城は郷土玩具の熱心な収集家としても知られていました。各地の郷土玩具を収集し、その知識を活かして関連書籍を共著するなど、収集活動も精力的に行っていました。

1973年には、岩手県で発見された新鉱物が「木下雲母（木下石、kinoshitalite）」と命名されるという栄誉にも浴しました。これは、彼の鉱物学への多大な貢献を称えるものと言えるでしょう。

木下亀城の生涯は、学術研究への情熱と、郷土玩具への愛情という二つの側面を併せ持った、充実したものでした。彼の残した膨大な研究成果と著作は、後世の研究者たちに多大な影響を与え続け、日本の鉱物学、地球科学の発展に大きく貢献しました。彼の業績は、単なる学術的成果にとどまらず、日本の文化への貢献という点においても高く評価されるべきでしょう。

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