木下陽子

木下 陽子の経歴と犯歴

木下陽子（きのした ようこ、1947年生まれ）は、朝鮮民主主義人民共和国の工作員として知られ、1973年に埼玉県で発生した2児拉致事件の主要な実行犯です。彼女の外国人登録名は洪寿恵（ホン・スヘ）で、1977年以降に日本に帰化したとみられています。

生い立ちと教育

1947年、長野県で在日韓国人の父と日本人の母の間に生まれた木下は、国籍は大韓民国籍でした。在日朝鮮人団体である朝鮮総連とは接点を持たずに育った彼女は、成績優秀で琴を楽しむ大人しい性格の女性でした。地元の名門高校から青山学院大学の文学部英文科に進学すると、朝鮮半島出身者向けの奨学金の選択に際し、朝鮮総連中央が運営する奨学金を選びました。

大学生活の中で、彼女は在日朝鮮人留学生同盟に参加し、多くの日本人や韓国籍の学生と関わったことで、北朝鮮の工作活動に適した人材として注目されました。1969年頃に朝鮮総連のいずれかの部署に配属され、おそらく20代前半で北朝鮮に渡り、工作員としての訓練を受けたと推測されています。

工作活動と拉致事件

洪寿恵は、北朝鮮の朝鮮労働党に係る工作組織「ふくろう部隊」を統括する幹部に昇進しました。「ふくろう部隊」は在日韓国人に対する工作を含む任務を果たし、北朝鮮の工作機関の一環として機能していました。この部隊の指揮官であった高大基が失踪後、洪はその後を引き継ぎました。彼女はまた、1971年に金炳植が設立した貿易会社「ユニバース・トレイディング」にも関与し、実態は北朝鮮の工作員が多数在籍するフロント企業であったとされています。

1974年6月、洪は高大基の妻と彼女の子供たちを拉致しました。母の渡辺秀子は高大基の行方を探し、洪の指導の下で監禁された後、拉致され、共に北朝鮮へと連れ去られることとなりました。彼らの行方は今も不明ですが、渡辺は洪の指示により命を落とし、その遺体は遺棄された可能性が指摘されています。

日本での生活と国際手配

1977年以降、洪寿恵は日本に帰化し、木下陽子と名乗りました。1981年、彼女は家族と共にウィーンへ向けて出国し、その後は北朝鮮の工作員として活動を続けていたと考えられています。日本の警察がこの事件について調査を開始したのは2007年からで、洪に対する逮捕状を発付し、国際手配を行なっています。彼女の逮捕と引き渡しを北朝鮮政府に要求するなど、事件の解明を目指しているのです。

まとめ

木下陽子の経歴は非常に複雑でありながら、暗い側面が色濃く残っています。彼女の存在は、日本と北朝鮮との関係や、在日韓国人の背景、そして北朝鮮工作機関の活動の実態を浮き彫りにしています。未解決の2児拉致事件としても語り継がれ、今も多くの人々にその影響を与え続けています。

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