木村常信

木村 常信

木村 常信（きむら つねのぶ）は、明治34年（1901年）9月4日に京都府京都市に生まれ、平成3年（1991年）4月24日に89歳でその生涯を閉じた、日本の著名な民法学者です。京都大学名誉教授の称号を持ち、法学分野において重要な足跡を残しました。また、私生活では、推理小説家として名を馳せた山村美紗や、政治学者として北海道大学名誉教授を務めた木村汎を子に持ち、女優の山村紅葉は孫にあたるという、文化・学術・芸術と多岐にわたる分野で活躍する家族を持つことでも知られています。

生涯と学歴

木村常信は、京都市で幼少期を過ごし、大正4年（1915年）3月に京都市下京区新道尋常小学校を卒業しました。その後、旧制中学校に進み、大正8年（1919年）3月に京都府立京都第二中学校を卒業。さらに第三高等学校に進学し、大正12年（1923年）3月には文科丙類を修了しました。学問への情熱を深め、京都帝国大学法学部法律学科に進み、大正15年（1926年）3月に卒業。卒業後、直ちに京都帝国大学大学院（当時の法学研究科）へと進学し、研究者の道を歩み始めました。

研究者・教育者としての歩み

大学院進学間もない大正15年（1926年）10月には、朝鮮総督府管轄の京城法学専門学校の教員として勤務を始めます。翌昭和2年（1927年）9月には同校の教授に就任し、戦前の朝鮮における法学教育に携わりました。教授在任中の昭和8年（1933年）11月からは、民法の研究を深めるため、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカといった欧米各国への海外留学を命じられ、約2年間にわたり研鑽を積みました。昭和10年（1935年）8月に帰国後、再び京城法学専門学校教授として教壇に立ち、昭和19年（1944年）7月には同校の校長事務取扱を命ぜられ、学校運営の中心的な役割を担いました。

終戦後、昭和21年（1946年）5月に法令に基づき自然退官という形で京城法学専門学校を離れることになります。その後、日本の教育現場に復帰するため、多様な任地での教職を務めました。昭和22年（1947年）4月には徳島県勝浦郡横瀬中学校長に就任。翌昭和23年（1948年）4月には大分経済専門学校教授に転じ、高等教育の場に戻ります。大分経済専門学校が母体となり大分大学が設立された昭和24年（1949年）には、6月から大分大学図書館長を兼務し、7月からは大分大学教授となりました。

昭和25年（1950年）3月には、母校である京都大学の教授として迎えられますが、当初は吉田分校に勤務しました。昭和38年（1963年）4月には京都大学教養部に異動となり、主に一般教育における法学を担当したと考えられます。昭和40年（1965年）4月からは鹿児島大学へ移り、法文学部教授として教育・研究を継続しました。文理学部も兼任し、幅広い分野で後進の指導にあたります。

退官後と学術的貢献

昭和42年（1967年）3月31日、大学の定年制度により鹿児島大学教授を退官しました。長年にわたり、京城から地方、そして京都大学に至るまで、様々な教育機関で法学教育と研究に尽力しました。特に民法学者として多くの研究成果を発表しており、その著書は多岐にわたります。有信堂やナカニシヤ書店から多くの著作を出版しており、主な著書には以下のようなものがあります。

『憲法講義案』（有信堂、昭和25年）
『法学-私権論』（有信堂、昭和26年）
『新民事責任論』（有信堂、昭和28年）
『法と権利』（有信堂、昭和28年）
『法学新論』（有信堂、昭和29年）
『法学の根本問題』（有信堂、昭和30年）
『法学序説』（有信堂、昭和33年）
『法学概論』（ナカニシヤ書店、昭和34年）
『新訂法学概論』（ナカニシヤ書店、昭和36年）
『法学の大家たち』（ナカニシヤ書店、昭和37年）
『多元的法律観』（ナカニシヤ書店、昭和38年）
『法の一般理論』（ナカニシヤ書店、昭和39年）

これらの著作は、当時の日本の法学研究に寄与するとともに、多くの学生や研究者に影響を与えました。また、フランスの公法学者レオン・デュギーの著作を翻訳するなど、海外の先進的な法理論を日本に紹介する役割も果たしました。『公法変遷論』（大鐙閣、昭和5年）はその代表例です。

木村常信は、教育者としては多様な環境で教鞭を執り、研究者としては民法を中心に幅広い法分野で業績を残しました。その学問的な貢献は、今日の法学研究にも脈々と受け継がれています。平成3年（1991年）4月24日に享年89歳で永眠しました。

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