木次文夫

木次文夫: プロ野球選手としての歩み

木次文夫（きつぎ ふみお）は1937年1月26日に長野県で生まれ、内野手として日本のプロ野球界で特異な存在となった選手です。彼の経歴を辿ると、高校時代からその素質は注目され、高校野球の名門、松商学園高校に進学しました。木次は2年生からレギュラーに名を連ね、1953年の夏の甲子園大会に出場。ここでは、チームは1回戦で敗退したものの、若き選手として知名度を上げることとなりました。特に翌年の大会では中京商に敗れたものの、自らの持ち味を示す中堅越えの三塁打を放つなど、結果を残しました。

高校卒業後、木次は早稲田大学に進学しますが、受験当日に受験票を忘れたことで浪人生活を経験。しかし1年後には早稲田に入学し、ここでもその才能を開花させました。東京六大学野球リーグでは2度の優勝を果たし、1959年には主将としてチームを引っ張り、全日本大学野球選手権大会でも優勝を成し遂げました。木次は大学でのキャリアを通じて66試合に出場し、ホームランも得点するなど、その実績は輝かしいものです。

1960年、木次は巨人に入団することになりました。この際、巨人、ダイエー、阪急の間での争奪戦が繰り広げられ、彼は大きな期待を背負ってプロの世界に飛び込みました。しかし、入団当初はその期待に応えることができませんでした。入団から2年目の王貞治は木次入団の影響を受け、奮起しました。王はその年、成績を残し続け、木次は出場機会を得られないまま、その数字を残すこととなりました。木次の初出場は1960年のことで、その後も限られた試合数に止まった結果、1962年には国鉄に移籍することになりましたが、こちらでも苦境が続きました。

彼のプロ野球選手としてのキャリアは、短いものでしたが、それでも彼の存在は王貞治に大きな影響を与えたと言われています。木次が入団しなかった場合、王貞治のキャリアはどうなっていたかという意見もあり、こうした背景から彼の存在の意味を再考する声も多く聞かれます。

引退後、木次は飲食や建築業、ゴルフ会員権の売買など多岐にわたる業務に携わることになりましたが、1977年には自宅で亡くなったことが確認されました。享年は41歳で、死因は脳溢血と考えられています。

評価としては、木次が巨人に加入したにもかかわらず、その期待に応えられなかったことから「大損」とされた面がある一方、王貞治選手を奮起させたという点で、やはり彼の加入は無駄ではなかったと歴史的に評価されている点がとても興味深いといえます。また、彼自身は引退後も巨人のファンであり、特に王貞治を生涯応援し続けたこともまた、彼の人柄を表すエピソードです。

木次文夫との関わりの中で評価されるべきはそのキャリア全体であり、内部の選手としての能力を引き出せなかった悲劇的な側面と、プロ野球に与えた影響の両面を捉えることが重要になるでしょう。

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