木頭杉一本乗り

木頭杉一本乗りの技術と文化の継承

木頭杉一本乗り（きとうすぎいっぽんのり）は、徳島県那賀町の木頭村で昭和30年代まで木頭杉の運搬に使われていた伝統的な技術です。このスキルでは、川に浮かべた丸太に立ちながら、鳶口のついた竹竿を使って丸太を操り、川を下るというものです。また、流れが穏やかであれば逆に川をさかのぼることも可能です。今日では、この伝統技術は一本乗り保存会によりスポーツとして受け継がれ、地域の文化として根付いています。

歴史的背景

木頭村での一本乗りは、昔の悪い道路事情を受け、切り出した杉の丸太を川を使って運ぶための実用的な手段でした。丸太が流される際、職人は川の流れに乗って丸太に立ち、流れの中でひっかかった丸太を再び流れに乗せるといった作業を行っていました。その後、道路が整備され、トラックが普及したことで、丸太の運搬は大きく変わりました。また、那賀川にダムが建設されたため、業務としての一本乗りは衰退しました。しかし、保存会が設立され、技術の継承が試みられています。

講習会と大会

毎年6月から隔週で開催される講習会では、昨今の参加者が熟練者から直々に技術を教わることができます。8月には木頭杉一本乗り大会が行われ、地域の人々や観光客が参加して盛り上がります。大会では級の認定試験や名人の試験が行われ、さらに水中宝探しや菓子撒きなどのイベントも催されています。この大会には、剣大二郎の「男の一本乗り」演歌ショーが欠かせない存在となっています。

競技に使用される道具

• - 丸太: 木頭杉の丸太は、長さ約4メートル、直径20cmから30cmのものが使用されます。一本立ちで操る技術がこの名称の由来です。
• - 鳶口（トビ付き竹竿）: この3メートルほどの竹竿の先端には金属製の鉤が付いており、丸太を引き寄せたり、バランスを取るための重要な道具となっています。

一本乗りの技術

初級者の技術

• - 立ち位置: 丸太の中央よりやや後方の位置に横向きに立ち、バランスを取りやすくすることが求められます。
• - 棹の持ち方: 棹の一端を両手で持ち、先端を水面に差し込む姿勢が基本です。これにより流れに逆らわずにバランスを保ちます。

中級者の技術

• - 方向転換: 棹を使って水をかき、丸太の向きを変える技術が必要になります。
• - 歩行: 丸太の上を歩くことにより、他の丸太へ飛び移る技術を習得します。

上級者の技術

• - 漕ぎ: 水面を漕ぐことで、丸太を前に進める高度な技術です。
• - 荒瀬越え: 流れの速い場所を越えるための高度なテクニックで、名人認定試験でも必要とされます。

まとめ

木頭杉一本乗りは、単なる運搬技術を超えて地域の文化や伝統に深く根差したスポーツです。毎年多くの人々が技術を学び、大会に参加し、先人たちの知恵と技能を次世代へと受け継いでいます。地域の人たちがこの伝統を大切にし、未来へ伝えていくことが求められています。

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