未回収のイタリア

未回収のイタリア

未回収のイタリア、またはイタリア・イレデンタは、19世紀においてイタリア王国が主張したが、イタリア統一戦争後もオーストリアの支配下にあった地域を指します。具体的には南ティロル、ゴリツィア・グラディスカ伯国、ヴェネツィア・ジュリア、フィウーメ、ダルマツィア地方などが含まれます。これらの地域は、旧ヴェネツィア共和国に属していたため、イタリア国民の間で強い帰属意識がありました。

リソルジメントとイレデンティズモ

1861年、イタリア王国が誕生しましたが、その後もオーストリアによる支配が続く南ティロルやヴェネツィア・ジュリアでは、祖国復帰を求める声が高まりました。1866年、イタリアは普墺戦争においてプロイセンと同盟し、オーストリアからヴェネツィアを奪還しましたが、他の地域を取り戻すには至りませんでした。1870年にはフランス軍の撤退を受けてローマを占領し、教皇領を併合し、名目上の統一を果たしましたが、未回収地域は依然としてオーストリアの手中に残っていました。

イタリアは国内建設に専念しつつも、オーストリアへの反感を持ち続けました。イレデンティズモ運動は、1877年に設立された「プロ・イタリア・イレデンタ」のような組織を通じて、復帰を目指す国民運動の性格を強めました。組織の主要メンバーはインブリアーニやガリバルディの支持を受けるも、彼らは過激なナショナリズムではなく、民衆的な意義を重視しました。

1882年に成立した三国同盟は、イタリアが当時ドイツやオーストリアと提携して進めたものでしたが、国内ではイレデンティズモ運動が衰えを見せませんでした。1895年にはイタリア首相フランチェスコ・クリスピが強力な対外政策を推進し、ドイツとの連携を強めましたが、反オーストリアの感情は根強く残りました。

第一次大戦と復帰運動

20世紀に入ると、イタリアは外交政策を転換し、独墺との三国同盟を持ちながらも、フランスやイギリスに接近しました。この変化により、復帰運動も帝国主義的な性格を帯びるようになり、1910年にはナショナリスト協会（ANI）が設立されました。第一次世界大戦勃発時、イタリアはオーストリアとの対立を背景に中立を選択しましたが、未回収のイタリアを巡る争いは深刻化していきました。

1915年、イタリアはロンドン密約を根拠に連合国側に参戦し、民族解放への期待感が高まりましたが、第一次大戦後の講和会議では多くの国民の期待に反し、実際には「損なわれた勝利」と称される結果となりました。この状況は、イタリア人の間に失望感を与えることになりました。

フィウーメの独立政府とラパッロ条約

1919年、ガブリエーレ・ダンヌンツィオはフィウーメにおいて独立政府を樹立し、多様な支持者を集めましたが、物資の不足が問題となり、次第に支持を失いました。結局、ダンヌンツィオは降伏し、フィウーメはユーゴスラビアの領土となりました。

その後、1920年にラパッロ条約によって一部地域がイタリアに返還されましたが、未回収地域は完全には解決しませんでした。

未回収のイタリア問題の解決

第二次世界大戦後、1946年には南ティロル地域のドイツ系住民に自治権が与えられ、1975年にはトリエステ問題の解決に至りました。欧州連合の成立を受け、オーストリア、スロベニア、クロアチアが相次いでEUに加盟したことで、未回収のイタリアに関する国境線は実質的に消失し、問題は一応の解決を見ました。

広義の未回収地域

広義では、未回収のイタリアは、イタリア語が話される全地域を含むとされ、フランスやスイス、さらにアフリカの一部まで主張されることがありました。ファシスト政権下でこれらの地域の「回復」を目指したように、未回収地域は今もイタリアの国家意識に影響を与えています。

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