末広座 (名古屋市)

末広座の歴史と影響

末広座（すえひろざ）は、愛知県名古屋市中区末広町に位置していた芝居小屋で、名古屋における劇場文化の重要な拠点でした。元禄・享保の頃に創設され、1872年に「末広座」という名称で改められました。当時の名古屋は多くの劇場が存在し、演劇や映画が盛んに行われていました。末広座は、名古屋市最古の劇場とされ、その歴史は長いものです。

末広座の開設と改築

初めは名古屋城下である若宮八幡宮の境内で営業していましたが、1830年から1844年の天保年間の中頃に現在の場所へと移転しました。これまでに何度か改築がなされ、1872年に末広座として再スタートを切ることとなります。その後、名称が変わることがあり、1977年には「愛栄座」と名付けられ、1882年に再び「末広座」に改称される経緯がありました。このように、劇場名は地域の芸能文化と密接に関連していました。

名古屋の文化と人々の関わり

末広座は地元の芸能の中心でもあり、多くの著名な俳優がここでキャリアをスタートさせました。特に、6代目中村傳九郎は末広座の子役出身で、後に名優となりました。また、1909年には7代目市川中車と7代目市川團吾が共演し、1917年には3代目中村時蔵が出演するなど、数多くの名士が出演しました。さらに1890年には衆議院の選挙期間中に演説会も行われ、地域の政治活動とも関係がありました。

活動写真の導入

1897年に末広座では名古屋初の活動写真興行が開催され、これはアメリカからの新しいエンターテインメント文化を名古屋に広める重要な出来事となりました。これにより、劇場としての新たな側面が加わり、より多くの観客を惹きつける要因となりました。

松竹による新展開

1927年には松竹が末広座を買収し、名古屋松竹座として新たに開館しました。この時期は歌舞伎と深い関係があり、松竹による運営のもとで多彩な公演が実施されました。しかし、1930年代末に発生した太平洋戦争によって、名古屋も多くの空襲を受け、松竹座は大きな被害を受けてしまいます。

戦後の復興と影響

戦後、末広座/松竹座の跡地は、古川為三郎の率いるヘラルドグループが取得し、1964年に中日シネラマ会館として開館しました。この施設は映画館やレジャー施設を擁し、2004年まで多くの人に利用されました。そして、2019年にはその跡地に高層マンション「栄タワーヒルズ」が竣工し、名古屋の都市景観の一部となりました。

末広座の歴史は名古屋の文化とともに歩んできたものであり、その存在と影響は現在も多くの人々の記憶に刻まれています。

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