本丸

本丸とは

本丸（ほんまる）は、日本の城郭における中心的な曲輪の呼称であり、一の曲輪や本曲輪、または一の丸といった別名でも知られています。中世期の城においてはその名は多様で、本城や実城、さらには詰丸と呼ばれることもありました。また、日本の中世考古学においては主郭（しゅかく）という用語が用いられることもあります。これに加えて、本丸はしばしば物事の本質や組織の中核を示す比喩としても使われます。

本丸の用途

中世の山城において、本丸は主郭であり大将が指揮を執る陣屋が設置されていました。戦時や籠城時には、麓の館から本丸の陣屋に移動して指揮を行ったのです。近世になると、本丸は城主とその家族が住む奥御殿や政務を行う表御殿を備え、さらに天守や櫓などの重層的な防御施設を整備することで、城主の権威を象徴しました。時には、本丸内部や外部に小規模な天守が併設された曲輪、すなわち天守曲輪または天守丸として呼ばれる区域も見られました。

本丸の役割は他の曲輪にも拡大されることがあり、例えば二の丸や三の丸に日常生活のための屋敷を置き、本丸自体は防御施設のみに特化させるケースもありました。このように、本丸はその機能に応じて簡素化され、その面積を狭めることも珍しくありませんでした。

本丸の御成御殿

江戸時代には本丸が「御成」の際の宿泊所としても利用されました。特に大坂城や名古屋城、淀城、宇都宮城、川越城などでは、将軍が本丸に設けられた御殿に宿泊することが通例であり、そのために城主は本丸の外に別の御殿を置き、そこで政務を執ることが多かったのです。名古屋城や淀城では、将軍が京都に上洛する際の宿泊所として、宇都宮城では日光東照宮参詣時の宿泊地として機能しました。また、大坂城では徳川将軍家が城主として直接関わっていたため、幕府派遣の大坂城代とその部下たちが他の曲輪に駐屯していました。このような本丸の御成専用の御殿は、「御成御殿」と呼ばれています。

現在の本丸

現在、本丸御殿として残るものは非常に少なく、高知城、川越城、そして松前城に限られています。特に高知城の本丸は、天守や御殿、城門、櫓、そして塀が一堂に現存する貴重な例として評価されています。これらの文化遺産は、日本の城郭建築における歴史的な価値を存続させる重要な証拠となっています。今後もこれらの遺構が適切に保存され、次世代に引き継がれることが求められます。

本丸は、ただの防御の拠点に留まらず、歴史の舞台、文化を育んできた場所としても注目され続けることでしょう。

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