本末制度

本末制度（ほんまつせいど）

本末制度は、江戸時代に江戸幕府が仏教教団を統制するために設けた制度です。この制度は、本寺または本山と呼ばれる大寺院が、小寺を末寺としてその指揮下に置き、統制する仕組みを指します。

制度成立の経緯

本寺と末寺の関係は、平安時代には既に存在していましたが、当初は本寺が末寺を保護するという形が主でした。しかし、江戸時代に入ると、江戸幕府は寺院を統制下に置くために、この関係を積極的に利用しました。

寛永9年（1632年）に幕府は各宗派の本山に対して「本末帳」の作成を命じ、末寺の調査を実施しました。その結果、当時は本寺を持たない寺院が多数存在することが判明しました。そこで幕府は、これらの寺院にも新たに本末関係を結ばせるよう指示しました。

元禄5年（1692年）には「本末帳」の改訂が行われ、本山から末寺に至る系列が明確化されました。これにより、幕府は寺院の系統を把握し、より効果的な統制が可能になりました。

幕府はこれに先立ち、慶長6年（1601年）の「高野山法度」を皮切りに、慶長13年（1608年）から元和2年（1616年）にかけて各宗派ごとに法度を制定していました。「本末帳」の作成とこれらの法度と合わせて、末寺の力を本寺に吸収し、全国の寺院を統制しようとしたのです。

本寺と末寺の関係

本寺は、末寺に対して僧侶の任命、僧階の付与、住職の任免、色衣の着用許可、上人号の執奏など、様々な権限を持っていました。また、本山行事への出仕を命令したり、本山費を徴収するなど、末寺に対して強い統制を行いました。一方、末寺は本寺に対して絶対服従を強いられ、本寺の指示に従う必要がありました。

寛永8年(1631年)には、新寺の創建が禁止され、翌年以降、各本山に「末寺帳」の提出が義務付けられました。これにより、地方の古刹も幕府の命令によって、形式的に特定の宗派に編入されることとなりました。

幕府は、江戸に設置された各宗派の「触頭（ふれがしら）」を通じて、幕府の意向を宗派の末寺に周知徹底させることが可能になりました。この制度により、幕府は全国の寺院を統制し、その影響力を強化しました。

影響と考察

本末制度は、幕府が寺院を統制するための重要な手段となりました。これにより、寺院は幕府の支配下に置かれ、宗教活動も幕府の意向に沿って行われるようになりました。この制度は、江戸時代の宗教界に大きな影響を与え、寺院の組織構造や宗教活動のあり方を大きく変えることになりました。

関連項目

単立寺院

参考文献

『品川区史　通史編　上巻』 四　近世編 （六）　生活と文化 1　社寺と信仰 （1）寺院の動き　本末制度　p917 ～p926　東京都品川区　1973年

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