本部マサ

本部マサと埴輪の世界

本部マサ（ほんぶ まさ、1907年 - 1991年）は、埴輪の複製制作に特化した日本の女性アーティストで、その作品は多くの人々に親しまれています。宮崎県で生まれ育った彼女は、幼少期から古墳や出土品に触れる環境で育ち、その影響を受けながら独自の埴輪制作に取り組みました。「はにわ製作の先駆者」として知られる彼女は、1955年に宮崎市に「本部はにわ製作所」を設立し以来、数多くの埴輪を制作し、観光土産として販売しました。

幼少期から始まった制作活動

本部マサは、下穂北村（現在の西都市の一部）で誕生しました。父親の大次郎は林業を営む傍ら、古墳や出土品に強い興味を抱き、それがマサにとっての創作意欲をかき立てました。幼い頃からそのような環境に身を置くことで、彼女は早いうちから古代の遺物に惹かれていきました。

女学校に通う頃には、実際に出土品を模倣して焼くなどの制作活動を始めました。延岡高等女学校卒業後は、その情熱を埴輪の模作に集中させ、1929年には埴輪の製作を事業として手がけるようになりました。

事業の拡大と観光業への貢献

1955年に本部はにわ製作所を法人化し、兄妹の協力により運営を開始しました。当時、宮崎県は観光地域としての注目を集め始め、観光土産として埴輪を求める多くの人々が訪れました。その結果、最盛期の1960年代には従業員数が180人に達するまでに成長しました。

また、本部は工房を訪れた著名人たちとも交流を重ね、1964年には川端康成が連続テレビ小説『たまゆら』の取材で宮崎市を訪れ、本部の埴輪製作に触れることになりました。それでも彼女は自身の作品を「芸術作品でも職人芸でもなく、単なる模作品」と謙遜していました。

聖火リレーと地域貢献

1964年には、東京オリンピックの聖火リレーの起点が宮崎市に決まり、平和台公園に設置される聖火台の制作を手がけました。この聖火台は、その後も公園内に残され、地域の歴史の一端を担っています。

1985年には、宮崎県が本部の業績を表彰しようとしたものの、彼女は自身の活動が模倣であることを強調し、名誉を辞退しました。このように謙虚な姿勢が、彼女のキャリアを特別なものにしました。

継承と現在

本部はにわ製作所は、マサの弟である沼口健次郎が事業を引き継ぎ、その後はマサの甥である沼口一夫が代表として事業を営んでいます。最新の情報では、同社は年間1万個の埴輪を生産しており、マサの遺志を受け継いで地域文化の継承を続けています。

本部マサの功績は、埴輪製作だけでなく、地域の文化を支える重要な存在なのです。

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