本間俊雄

本間 俊雄

人物

本間 俊雄（ほんま としお）は、1955年に東京都渋谷区で生まれた日本の建築学者である。彼の専門は建築構造の数値解析にあり、特にコンピュータを用いた構造物の複雑な挙動や形状に関する解析・設計技術開発に貢献した。長年にわたり鹿児島大学で教育・研究活動を展開した。

略歴

本間は、1979年に日本大学生産工学部数理工学科を卒業し、学問の道に進んだ。その後、同大学院生産工学研究科建築工学専攻の博士前期課程を修了（1981年）。大学院修了直後の1981年から1982年にかけては、日本大学生産工学部で職員として勤務した。

さらに高度な研究を目指し、日本大学大学院理工学研究科博士後期課程海洋建築工学専攻に進学し、1986年に修了した。同年、論文「有限要素法による張力場の近似解析に関する基礎的研究」により、日本大学から工学博士の学位を授与されている。学位取得後も、1986年から1989年まで同大学院理工学研究科の研究員として研究を続けた。

1986年から1998年までの12年間は、民間企業であるフジタ工業（現 株式会社フジタ）の技術開発研究所に在籍し、建築の実務に直結する技術開発に従事した。この間、研究成果の一部は外部でも評価され、1993年および1994年にはNICOGRAPH論文コンテストで佳作を受賞。さらに1997年には、建築学における顕著な研究業績に対して贈られる日本建築学会奨励賞を受賞している。

1998年、本間はアカデミックなキャリアへと転じ、鹿児島大学工学部建築学科に助教授として赴任した。同時に大学院理工学研究科建築学専攻の指導教官も務め、研究室を主宰し後進の育成にあたった。その後、2004年まで大学院理工学研究科物質生産工学専攻の指導教官も兼任した。

鹿児島大学においては、工学部建築学科助教授を経て、2007年に教授に昇任した。建築構造構成学講座を担当し、2009年からは大学院理工学研究科建築学専攻の教授として、専門分野における教育研究活動を推進した。

研究内容

本間の研究は、建築構造の数値解析、特に幾何学的非線形解析や形態創生、構造最適化といった分野を主軸としている。初期の研究から、有限要素法を用いた張力構造、例えば膜構造やケーブル構造の解析に力を入れてきた。膜構造については、正確な形状把握に不可欠な裁断図解析に関する研究を数多く発表し、その解析手法や実験による検証を行った。座標仮定有限要素法など、非線形性が強い構造形式に適した解析技術の開発・応用にも取り組んだ。

また、自由曲面シェルやグリッドシェルといった複雑な空間構造物の構造解析や、より効率的・合理的な構造形態を見出すための最適化研究も行った。構造最適化においては、解の多様性を考慮した遺伝的アルゴリズム（GA）などの進化計算手法を積極的に導入し、設計の可能性を広げる試みを行った。

専門の構造分野を超えた応用研究も行っており、地域社会における人々のつながりの構造分析や、街路景観を感性評価と自己組織化臨界状態解析を用いて評価する試みなど、建築学の知見を広範な社会課題に応用する研究にも取り組んでいる。これらの多岐にわたる研究成果は、国内外の学会発表や論文として多数公表されている。

本間は、建築構造工学における数値解析技術を深化させるとともに、計算科学や社会科学の手法を取り入れ、建築の設計・計画における新たなアプローチを提示した研究者と言える。

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