杉の溝腐病

スギの溝腐病について

スギの溝腐病は、スギの木に発生する深刻な病気で、特に植栽後20年程度で幹に特徴的な溝が現れることで知られています。この病気は、主に2つのタイプに分類されます。

赤枯病による溝腐病

このタイプの溝腐病は、スギ赤枯病菌（Passalora sequoiae、旧学名Cercospora sequoiae）によって引き起こされます。この菌は、スギの苗畑で病害を引き起こすことで知られており、感染した苗を植栽することが、溝腐病の発生につながります。幹に現れる窪みは深く屈曲した溝となるのが特徴です。

対策

赤枯病による溝腐病を防ぐためには、まず、赤枯病に感染した苗を林地に植栽しないことが最も重要です。健康な苗を選ぶことで、病気の蔓延を防ぐことができます。

非赤枯性溝腐病

一方、千葉県特産の山武杉に見られる溝腐病は、赤枯病菌が原因ではないことが判明しており、「非赤枯性溝腐病」と呼ばれています。この病気は、幹に縦にまっすぐな窪みが現れ、白色腐朽となり、黄褐色雲形の帯線が現れるのが特徴です。この病気の原因となる病原体は、担子菌に属するチャアナタケモドキ（Fomitiporia torreyae）であることが、近年の遺伝子解析により明らかになりました。以前はPhellinus punctatusと同種とされていましたが、最新の研究によって異なる種であることが確認されました。

この病気は全国的に蔓延しているわけではなく、主に千葉県と茨城県の一部地域でのみ発生が確認されています。しかし、2019年の令和元年房総半島台風（台風15号）の際には、千葉県での大規模な停電被害の一因として、この病気によるスギの倒木が多数発生したことが指摘されています。林業の衰退により、病気に感染した木々の管理が行き届かず、非赤枯性溝腐病が蔓延したことが、被害を拡大させた要因の一つと考えられています。



参考資料

森林生物データベース 00080 スギ溝腐病 国立研究開発法人 森林研究・整備機構
スギ溝腐れ病 森林総合研究所 九州支所
千葉県森林審議会 サンブスギ溝腐病対策について 千葉県公式サイト
千葉大停電の遠因か。倒木処理の難しさと山武杉の悲劇を振り返る Yahoo!ニュース (アーカイブ)



関連情報

スギ
山武杉
* 樹病学

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