杉下右京のアリバイ

『杉下右京のアリバイ』

『杉下右京のアリバイ』は、碇卯人による日本の推理小説で、テレビドラマ『相棒』のノベライズを手がける碇によるオリジナル小説シリーズの第4弾です。前作『杉下右京の密室』に続き、本作ではアリバイを題材とした2つの物語が展開します。

奇術師の罠

オリンピック開幕直前のロンドンを訪れた杉下右京は、トラファルガー広場でアフタヌーンティーを楽しもうとしていたところ、突然、ヨハンセン巡査部長に昨夜のアリバイを尋ねられます。オペラ鑑賞をしていたと答えるも信じてもらえず、スコットランドヤードへ連行されてしまいます。そこで、かつて研修でお世話になったハンブルビー警部が右京の身元を証明し、容疑者とも体格が違うことから、ヨハンセンの軽率さをたしなめます。

右京の協力により、被害者宅のインターホンカメラの映像から、容疑者が日本人奇術師・ロイ堀之内であることが判明します。しかし、堀之内には、被害者の死亡推定時刻には、ロンドンから150キロ離れたバーミンガムで舞台中だったという完璧なアリバイがありました。さらに、舞台を見ていた警察官によると、堀之内は舞台中にテレポートをし、殺人予告とも取れる発言をしていたというのです。右京は、ヨハンセンと共に、この不可能犯罪の謎に挑むことになります。

登場人物

杉下 右京：警視庁特命係の警部。休暇でロンドンを訪れる。
アダム・ハンブルビー：ロンドン警視庁の警部。右京が研修時に教官を務めた。
エドガー・ヨハンセン：ロンドン警視庁の巡査部長。巨漢でスキンヘッド。
ロイ堀之内：日本でも名の知れた奇術師。本名は田中良治。サイトウ殺害の重要参考人。
マーチン・サイトウ：殺害された実業家。堀之内にイギリス公演をオファーした。
キャサリン・オーデル：サイトウ邸のハウスキーパー。遺体の第一発見者。
パトリック・ワイルド：現場に駆けつけた警官。
箕輪 有紀子：堀之内のマネージャー。
重富 益男：制作兼大道具担当スタッフ。
河野 丈衛：照明兼音響担当スタッフ。
橘 レナ / 中野 麻美：堀之内のアシスタント。
藤峰 さくら：堀之内の元アシスタント。
エドワード・クリーズ：サイトウの顧問弁護士。
フレッド・ホジキンスン：サイトウの甥。サイトウE&Eの取締役。

シリアルキラーY

ロンドンを発ち香港に着いた右京は、夜景を堪能した後、ヴィクトリアパークで事件に遭遇します。公衆トイレから悲鳴を上げて逃げ出す男、そしてサバイバルナイフを持って襲いかかる若い男、それを拳銃で射殺する女性。その女性は香港警察のビビアン・ウォン刑事でした。

右京は、身元照会によって容疑が晴れますが、ウォン刑事の発砲が正当なものだったか意見を求められます。射殺された男が、香港を恐怖に陥れていた「シリアルキラーY」だと聞かされ、右京は興味を持ちます。しかし、その後、九龍の埠頭で新たな遺体が発見され、Yが移動に使用していたと思われる香港MTRが電気系統のトラブルで停止していたことから、ウォン刑事が射殺した男がYではなかった可能性が浮上します。右京の指摘を受けたウォン刑事は、奇妙な日本人刑事と共に捜査を開始します。

登場人物

杉下 右京：警視庁特命係の警部。
ビビアン・ウォン：香港警察の刑事。独断専行が多い。
ディック・チャウ：香港警察の刑事部長。
レスリー・ラウ：犯罪心理学者。ウォン刑事と行動を共にする。
シリアルキラーY：黒髪の女性を殺害する連続殺人犯。
ケリー・リー：香港大学の准教授。5人目の被害者。
呉 龍仁：ウォン刑事が射殺した男。
アンディ・ワン：呉を雇っていた釣り具店の店主。
* チャールズ・リョン：香港大学心理学科教授。リーの指導教官。


この2つの物語を通して、杉下右京の卓越した推理力と、彼の独特な視点が描かれています。読者は、不可能犯罪のトリックや、シリアルキラーの正体に迫るスリリングな展開を楽しむことができるでしょう。また、ロンドンや香港の街並みが舞台となることで、異国情緒あふれる雰囲気も堪能できます。

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