杉尾神明社

杉尾神明社

概要

富山県南砺市西南部、かつての平村杉尾集落にひっそりと鎮座する杉尾神明社。この古社は、地域の歴史と深い関わりを持つ場所として知られています。その明確な起源については詳らかではありませんが、正徳二年（一七一二年）に記された『五ヶ山村々神号之覚』には、すでに杉尾村の神明宮としてその名が見え、当時は砺波郡北野村にあった山伏寺、海乗寺の管轄下に置かれていたことが記されています。

歴史的な出来事と社殿

社伝によれば、明治三十年（一八九七年）一月十一日深夜、村を襲った大火災において、奇跡的な出来事がありました。若者の不注意から発生した火は瞬く間に広がり、杉尾村の家屋の実に五分の四が焼失するという惨事となりました。猛威を振るう炎は神明社の社殿にも迫りましたが、境内に立つ巨木、後に文化財に指定される大欅が炎を防ぐ盾となり、社殿の焼失を免れたと伝えられています。この出来事は、地域の人々の間で長く語り継がれ、欅に対する崇敬の念を深めることとなりました。

社殿はその後、昭和十八年（一九四三年）十月に大規模な修築が行われ、この時に整備された社殿が現在まで大切に用いられています。

祭礼

杉尾神明社では、年間を通じて二つの重要な祭礼が執り行われます。春季祭礼は毎年四月十九日に、そして秋季祭礼は十月四日に開催され、地域の安寧と五穀豊穣を願う人々で賑わいます。これらの祭礼は、地域社会の結びつきを強める大切な行事となっています。

境内の文化財：門杉と欅

杉尾神明社の境内には、貴重な自然遺産として南砺市指定文化財となっている二本の古木があります。

門杉

参道の入り口近くに、あたかも門を成すかのように二本の大杉が並び立っています。これらは「門杉」と呼ばれ、社殿正面に相対するように植えられたと考えられています。長年にわたり共に育ち、その位置や樹齢、さらには樹高までもがよく似た姿で、訪れる人々を迎えています。

大欅

そして、境内でもひときわ存在感を放つのが、樹齢およそ五百年とされる大欅です。この欅の太い幹には、前述の明治三十年の大火で受けた火傷の跡が生々しく残されています。しかし、この傷跡こそが、激しい炎から社殿を見事に守り抜いたという伝説の証として、地域の人々から深く崇敬されています。火災を乗り越え、今なお力強く生きるその姿は、杉尾神明社の歴史を見守り続けています。

これらの門杉と大欅は、その歴史的・文化的価値が認められ、平成元年（一九八九年）六月十日に当時の平村の文化財に指定されました。その後、市町村合併を経て、現在は南砺市の指定文化財として、大切に保護されています。

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