杉山祐子

杉山祐子氏は、日本の文化人類学者であり、弘前大学人文学部の教授として教鞭を執っています。専門はアフリカ社会に関する生態人類学的研究であり、特にザンビアのベンバ族を中心とした焼畑農耕民の社会構造や、その変化に着目した研究を行っています。

1981年に埼玉大学教養学部文化人類学コースを卒業後、筑波大学大学院歴史・人類学研究科博士後期課程に進み、1987年に修了しました。その後、弘前大学人文学部にて教鞭を執り、現在に至ります。

杉山氏の研究は、アフリカの農村社会における伝統的な生活様式と、近代化の波がもたらす変化との関係性を深く掘り下げています。特に、農業政策の転換がベンバ族の農村に与える影響や、ファーム化の進展がベンバ女性の生活に及ぼす変化に着目し、詳細なフィールドワークを通じて、その実態を明らかにしています。

また、杉山氏は、焼畑農耕民社会における「自給」のあり方や、柔軟な離合集散といった社会構造の特徴を分析することで、アフリカにおける「モラル・エコノミー」の概念を再検討しています。さらに、土地や自然資源をめぐる認識、実践、表象過程を研究することで、文化人類学的な視点から、地域社会のあり方を考察しています。

著書や論文では、ザンビアにおける農業政策の変化、ベンバ女性の生活戦略、農業の近代化と母系社会の関係、アフリカ女性の生計活動など、多岐にわたるテーマを取り扱っています。これらの研究を通じて、杉山氏は、アフリカ社会の複雑な構造や、グローバル化がもたらす影響について、貴重な知見を提供しています。

主な著書として、『アフリカの政治経済変動と農村社会』に収録された「ザンビアにおける農業政策の変化とベンバ農村」や、『アフリカ女性の民族誌―伝統と近代化のはざまで』に収録された「離婚したって大丈夫―ファーム化の進展とベンバ女性の現在」などがあります。これらの著書では、フィールドワークで得られた豊富な事例をもとに、アフリカ社会の現実を生き生きと描き出しています。

また、論文では、「調査実習の事例報告 職人をフィールドワークする -弘前大学人文学部社会調査実習の実践」（共著）や、「書評 今村薫著『砂漠に生きる女たち -カラハリ狩猟採集民の日常と儀礼』」など、幅広いテーマに関する研究成果を発表しています。これらの論文を通じて、杉山氏は、文化人類学の研究方法や、アフリカ社会に対する理解を深めるための新たな視点を提供しています。

杉山氏の研究は、アフリカ研究のみならず、文化人類学、社会学、開発学など、様々な分野の研究者や実務家にとって、貴重な情報源となっています。今後の研究活動にも、大いに期待が寄せられています。

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