李仕魯

李仕魯（りしろ、生年不詳 - 1383年）は、明の初期に活躍した朱子学者であり官僚です。字は宗孔といい、本貫は濮州鄄城県にありました。若くして非常に聡明で、学問に熱心であったと伝えられています。一時期は3年間も家から一歩も出ずに勉学に励んだという逸話も残っています。彼は、南宋の朱熹の学統を継ぐ朱公遷という人物が鄱陽にいると聞きつけ、そこへ遊学して朱熹の学問を深く学びました。

洪武帝はかねてから李仕魯の名を知っており、洪武年間に朱子学に通じた人材を求める勅命を出しました。これに応じて役人が李仕魯を推挙し、仕魯は朝廷に召し出されて洪武帝に謁見しました。洪武帝は李仕魯に会うと、「私は先生を求めること久しかったが、どうして会うのがこんなに遅くなってしまったことか」と大変喜びました。この出会いをきっかけに、李仕魯は黄州府同知に任命され、その才能を発揮することになります。1381年（洪武14年）には、大理寺卿という重要な役職にまで昇進しました。

しかし、洪武帝は仏教を深く信仰しており、しばしば僧侶を招いて蔣山で大規模な法会を開催していました。洪武帝と対談した僧侶には金襴の袈裟が与えられ、宮中に招き入れられました。呉印や華克勤といった僧侶たちは、その影響力を背景に要職に抜擢され、大きな権勢を振るうようになりました。彼らは増長し、大臣を誹謗中傷するようなこともあったとされています。給事中の陳汶輝がこのような状況を諫めましたが、洪武帝は聞き入れませんでした。僧侶たちは仏教僧のための役職を創設することを求め、洪武帝は僧録司を設置し、左右善世、左右闡教、左右講経覚義などの官職を設けました。道教にも同様の役職が設けられ、出家する僧尼や道士が数万人に達しました。李仕魯は、この状況を憂い、上奏して仏教に偏りすぎた政策を諫めましたが、洪武帝はそれを受け入れませんでした。

1383年（洪武16年）、李仕魯は洪武帝の前で「陛下が仏教に溺れて、臣の諫言を聞き入れられないのであれば、私はこの笏を返上し、引退して故郷に帰りたいと思います」と述べ、持っていた笏を地面に置きました。これに激怒した洪武帝は、武士に命じて李仕魯を捕らえさせ、そのまま階下で立たせたまま死なせてしまいました。李仕魯は、その信念を貫き通した結果、悲劇的な最期を遂げることになりました。彼の死は、洪武帝の専横ぶりを示す出来事として、歴史に記録されています。

李仕魯は、その学識と正義感から洪武帝に重用されましたが、その一方で、時の権力者に対して毅然とした態度で意見を述べ、結果的に非業の死を遂げました。彼の生涯は、為政者に対する諫言の重要性と、信念を貫き通すことの難しさを後世に伝えています。

参考文献
* 『明史』巻139 列伝第27

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