李応

人物概要

李応（り おう）は、中国の古典文学四大奇書の一つ、『水滸伝』に登場する重要な人物です。天富星の生まれ変わりとされる梁山泊第十一位の好漢であり、その渾名は「撲天鵰」（はくてんちょう）と呼ばれ、「天を打つ鷲」という意味を持ちます。この渾名は、彼が優れた点鋼槍の使い手であることに加え、背中に隠し持った飛刀（投げナイフ）を百歩の距離から正確に操り、敵を打ち倒す驚異的な武芸の腕に由来しています。

彼は元々、鄆州独竜岡に位置する三家荘の一つ、李家荘を取り仕切る村の長者でした。広大な荘園を経営する大変な富豪であり、その人格も優れていたことから、周囲からの尊敬を集める大人物でした。

梁山泊への道

李応が住む独竜岡は、山賊の根城である梁山泊に近い場所にありました。そのため、隣接する祝家荘、扈家荘という他の二つの荘園と有事に備えた同盟を結んでいました。ある時、梁山泊の仲間である時遷が祝家荘に捕らえられたことから、楊雄と石秀が李応のもとを訪れ、仲介役を依頼します。

李応はこれに応じ、祝家荘の主である祝朝奉に手紙を送りますが、朝奉の息子である祝彪によって無下に断られてしまいます。業を煮やした李応は自ら祝家荘へ赴きますが、次兄の祝虎に矢を射かけられ、肘に傷を負ってしまいます。楊雄と石秀は李応を気遣い、一旦身を引きました。

その後、楊雄と石秀は梁山泊へ向かい、祝家荘との争いを解決するための援軍を求めます。これがきっかけとなり、梁山泊と祝家荘の間で大規模な抗争が勃発しますが、李応自身はこの時点では梁山泊の仲間と見なされることを恐れ、屋敷に戻り事態の推移を静観していました。ところが、戦いが終結した直後、州知事を名乗る一団が李家荘に現れ、「梁山泊に内通した」という罪を着せられ、家来の杜興と共に逮捕されてしまいます。

しかし、これは梁山泊の軍師である呉用の巧みな計略でした。州知事一行は、梁山泊の裴宣らが変装した偽物だったのです。李応と杜興が連れ出されている間に、李家荘の屋敷は焼き払われ、彼の一族郎党は既に梁山泊へと誘導されていました。退路を断たれた李応は、やむを得ない状況で梁山泊に身を寄せることとなりました。

梁山泊での役割

梁山泊に加わった当初、李応は騎兵部隊を率いて前線で戦いました。華州攻めや北京攻めでは、勅使の護衛官や旅人に変装して敵地への潜入や計略の実行に貢献するなど、その才覚を示しています。

梁山泊に百八星の好漢が集結した後、李応は柴進と共に、組織の運営に不可欠な金銭と糧食の管理責任者という幹部職に任命されました。これは、彼が元々裕福な荘園主であり、財務管理の能力に長けていたことが考慮されたためでしょう。この役職に就いて以降、彼は前線で武功を披露する機会は減り、主に後方支援や兵站を担当するようになります。

梁山泊が朝廷に帰順した後に行われた各地での戦いでも、彼は主に守備隊や補給部隊の指揮官として活躍しました。しかし、方臘討伐戦においては、家来であった杜興と共に遊撃隊を率い、敵将・伍応星を得意の飛刀で見事に討ち取るという、久々に彼の武芸の冴えを見せる場面もありました。

穏やかな最期

方臘討伐の戦いが終わり、梁山泊の多くの好漢が命を落とすか、志半ばで散っていく中、李応は数少ない生き残り組の一人となります。彼は戦功によって中山府の都統制という官職に任じられました。

しかし、官職に就いて半年ほど経った頃、同じく任官していた柴進らが病と称して官を辞したことを知ります。李応もまた、病気を理由に官職を辞し、家来の杜興と共に故郷である独竜岡へと帰還しました。その後は再び富豪として、穏やかな生涯を送り、天寿を全うしたとされています。

多くの好漢が悲劇的な最期を迎える中で、元々の裕福な境遇に戻り、波乱の人生を平穏な晩年で終えた、ある意味で幸運な人物と言えるでしょう。

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