李箕永

李箕永（リキエイ）の生涯と文学

李箕永は1896年5月に忠清南道牙山で生まれ、数多くの筆名を持ち、朝鮮文学の重要な作家としての地位を確立しました。彼の本貫は徳水にあり、号は民村です。李の作品は、彼自身の過酷な人生経験を背景に、貧困や社会の不平等をテーマにしています。彼は日本統治時代、プロレタリア主義の作家として、また解放後には左翼文壇の重鎮として知られています。

幼少期からの教育

李の幼少期は貧困にあえぎ、母親を11歳で亡くした後は更に厳しい環境で育ちました。それでも、李は学業に励み、1906年には私立寧進学校に入学します。この学校は、彼の父が設立したもので、開化思想に基づいて教育が行われていました。李はこの学校で新制作小説に触れ、1917年にはキリスト教にも入信します。

日本での学びと文筆活動

1921年に渡日し、正則英語学校に入学しますが、関東大震災によって学業が中断され、朝鮮に帰国します。文壇に登場したのは1924年で、「開闢」に掲載された「오빠의 비밀 편지」が最初の作品です。1925年には趙明熙の勧めで『朝鮮之光』に編集記者として就職し、同年に朝鮮プロレタリア芸術家同盟（KAPF）に参加します。この頃から李の作品は、貧困層の現実を鋭く描写するものとして高く評価されていきます。

政治的圧力と文学活動

李は文壇において著名な作家に成長しましたが、1930年代にはKAPFが政府からの弾圧に直面します。彼は第1次及び第2次KAPF一斉検挙に巻き込まれ、それぞれ短期間の拘束と投獄を経験します。これらの経験は李の文学に深い影響を与え、彼の作品はますます社会的な批判が色濃くなっていきました。

転機と晩年

第二次KAPF一斉検挙後、李は文筆活動を一時中断し、精神的な転機を迎えます。1944年には筆を折り、故郷から離れた江原道で静かに生活を送ります。しかし、1945年に日本の敗戦に伴い朝鮮が解放されると、彼は活動を再開し、教育分野や文化団体での役職に就きます。特に北朝鮮の各種文化団体で重要な役割を果たしました。

李箕永の文学は、朝鮮戦争を経ても彼の評価を落とすことはありませんでした。彼は南北朝鮮の文壇で高い地位を持ち続け、数多の政治的職務も担いました。特に、朝鮮作家同盟や北朝鮮文学芸術総同盟のリーダーとして活動し、文化的な影響力を維持しました。彼の存命中、多くの才能あふれる作家を育成し、朝鮮文学に貴重な足跡を残しました。

最後まで文学への情熱を持ち続けた李は、1984年8月9日に病気により亡くなりました。彼の作品は今もなお、多くの読者に影響を与え続けています。李箕永は、時代を超えて愛される文学者として、朝鮮文学史に名を刻む存在です。彼の作品を通して、未だに多くの人々が彼の描いた世界に触れ、歴史の文脈を思索する機会を持つことができています。

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