村澤陶苑

村澤陶苑の歴史と現代

栃木県芳賀郡益子町に位置する村澤陶苑は、益子焼の伝統を受け継ぐ窯元であり、陶器製造業者です。初代の村澤已之助が1900年にこの地で窯を開いたことから始まった村澤陶苑は、現在で5代目の村澤亨がその歴史を受け継いでいます。

初代から3代目までの苦難と革新

初代・村澤已之助は1900年に益子に登り窯を設置し、陶器の製造を始めました。その3年後には、已之助の息子である村澤正が2代目として窯を継ぎました。昭和初期には、陶器の普及が進む中、正は自身の技術を磨き続けました。

3代目の村澤一正は1924年に生まれ、1940年に益子尋常小学校を卒業後、1955年に陶苑を引き継ぎました。しかし1960年代には陶器不況が訪れ、日用品の売上が低迷しました。そのため、一正は民芸品の制作に方向転換し、窯元の存続を図ることにしました。当初は苦労したものの、人間国宝の濱田庄司との出会いをきっかけに、その決断は次第に実を結び、益子焼の民芸風製品が人気を博しました。

4代目の成長と伝統の継承

村澤一正の息子である4代目・村澤浩は1948年生まれ、1968年に窯業技術を学びました。浩は家業を守るために、父の築いた大きな登り窯での焼成に力を注ぎました。彼は自分のスタイルを追求しつつ、陶苑の商品も作り続けました。浩の職人としての誇りは「自分は職人ですから」という言葉に込められています。

5代目・村澤亨と新たな挑戦

1979年に生まれた村澤亨は、成長する中で家業を継ぐことが自然な流れだと感じ、実際に陶芸の世界に身を投じました。最初は父からの助言を受けながら、伝統技術を学びました。しかし、自身の作品を作る夢を持ち、さまざまな試行錯誤を重ねました。

しかし、2011年1月に父・浩が逝去、さらに東日本大震災が重なり、村澤陶苑の大切な登り窯が破壊される事態が発生しました。亨は、まずは壊れた登り窯の一部を残し、新しい窯の製作を決意。地域の職人やボランティアの助けを得て再建を果たしました。現在も、亨は自分の作品を焼くため、年に一度は登り窯を炊くことを欠かしていません。

現代の村澤陶苑

村澤陶苑では、信頼を置ける登り窯を確保し、技術の伝承と並行して新しい陶芸スタイルを模索し続けています。亨は、益子焼の伝統を守りながら、将来的には息子たちにもその技術と精神を受け継いでもらいたいと、この地での作陶活動を貫いています。

村澤陶苑は、陶器を通して人々に感動を与えるだけでなく、その歴史を次世代に伝えていくために、日々努力を続けています。

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