村越としや

村越としや（むらこし としや）

1980年5月22日、福島県須賀川市に生まれる。日本の現代写真界で活動する写真家。文化服装学院を中退した後、日本写真芸術専門学校で専門的な学びを深めた。

これまでの活動において、写真家としての実力を示す複数の賞を受賞している。2011年には日本写真協会賞新人賞、2015年にはさがみはら写真新人奨励賞を受賞しており、今後の活躍が期待される写真家の一人として高く評価されている。

写真表現を追求する活動の拠点として、2009年には写真家たちのコレクティブである「TAP」（現TAP Gallery）を東京・清澄白河に共同で設立した。TAPでは、展示や出版活動を通じて精力的に作品を発表し、自らの表現を深めるとともに、他の写真家との交流や発表の場作りにも貢献した。しかし、設立から数年後の2015年に同会を脱会している。

森山大道との関わり

村越氏のキャリアにおいて特筆すべきエピソードとして、写真家・森山大道との関係性が挙げられる。2011年に東京オペラシティアートギャラリーで開催された大規模な展覧会「森山・新宿・荒木」展において、村越氏は森山大道の助手を務めた経験を持つ。

この時のエピソードは、森山大道の著書『昼の学校 夜の学校』（平凡社）にも記されている。展覧会の展示空間の一角を、森山はかつて自らが被写体としてきた「新宿の街角のようなコーナー」にしたいと考え、その空間に新宿ゴールデン街のポスターを複写して貼り付けることを思いついたという。森山はこのポスター撮影について、「あれはぼくがプランとアイデアを出して、村越君という若い写真家に全部撮ってもらったんです」と述べている（P.216）。この記述からは、森山が村越氏を単なるアシスタントとしてではなく、アイデアを実現できる一人の写真家として信頼し、重要な撮影を依頼していた様子がうかがえる。

実際に、村越氏によって複写・撮影されたこれらのポスターは、「森山・新宿・荒木」展の図録にも8点が収められている（P.166-173）。これは、単なる記録写真に留まらない、展示コンセプトを実現するための創造的な仕事であったことを示している。

また、村越氏自身も森山大道から大きな影響を受けていることを公言している。2006年10月号の「日本カメラ」誌に掲載されたインタビュー（TEXT;上野修）の中で、村越氏は特定の写真家作品からの直接的な影響はないとしながらも、「森山大道という写真家自身から受けた影響は大きかった」と語っている。森山を「魅力的」な存在であり、「写真に対する興味をいっそう膨らませてくれた」人物として言及しており、森山大道という個そのものが、村越氏の写真家としての探求心を掻き立てる源泉となったことがうかがえる。

その他の活動と収蔵

村越氏はこれまでに、「草をふむ音」（2008年）、「あめふり」（2006年、2020年再版）、「火の粉は風に舞い上がる」（2014年）、「雷鳴が陽炎を断つ」（2016年）、「沈黙の中身はすべて言葉だった」（2017年）、「月に口笛」（2017年）、「血の針」（2019年）、「残渣」（2020年）など、多くの写真集を精力的に刊行している。また、国内外で個展を多数開催しており、その発表の場は多岐にわたる。

村越氏の作品は、国内外の重要な公立美術館や機関にも収蔵されている。東京国立近代美術館、サンフランシスコ近代美術館、相模原市、福島県立博物館といった場所にその作品が所蔵されており、写真家としての評価の高さを示している。

現在、村越氏は武蔵野美術大学および日本写真芸術専門学校で講師を務めており、後進の育成にも力を注いでいる。写真家としての自身の活動に加え、教育者としても日本の写真界に貢献している。

関連項目

森山大道
丹野清志
鈴木清
TAP Gallery

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