来るべき世界 (漫画)

来るべき世界

『来るべき世界』（きたるべきせかい）は、日本の漫画界の巨匠、手塚治虫によって1951年に発表されたSF漫画作品です。この作品は、不二書房から上下2巻として刊行され、英語では「THE WORLD OF THE FUTURE」と「NEXTWORLD」というタイトルが付けられています。手塚治虫の初期SF3部作の一つとして位置づけられており、『ロストワールド』や『メトロポリス』と並ぶ重要な作品とされています。

概要

本作は、冷戦時代の緊張が高まる中、人類の存亡を巡る壮大な物語が展開されます。作品は、特に多様なキャラクターたちが同時に展開する群像劇的な構成が大きな特徴です。主人公である科学者・山田野博士と彼が発見した知的生命体フウムーンとの出会いを通じ、国家間の対立や戦争の影響が描かれ、テーマとしては人類の未来や他の生命体との関係が巧みに示されています。

作品の題名は、H・G・ウェルズ原作のSF映画『来るべき世界』（1936年）の日本公開時のタイトルから来ていますが、手塚治虫は執筆時にこの映画を見たことがなかったとされています。映画の原題は『Things to Come』、原作小説の原題は『The Shape of Things to Come』となっています。

ストーリー

物語は、日本の科学者・山田野博士が核実験場の島で未知の高等生物を発見するところから始まります。この生物を捕獲し、国際原子力会議にその存在を報告しますが、世界の二大超大国であるスター国とウラン連邦はお互いに対立しており、この情報に真剣に耳を傾けることなく争い続けます。そして、ついには両国は全面戦争に突入し、その中で少年少女たちが運命的な出来事に巻き込まれていきます。一方、山田野が発見した高等生物フウムーンは、地球とは異なる環境下で別の危機に直面しており、独自の計画を進めていることが明らかになります。

登場人物

作品には多彩なキャラクターが登場し、それぞれに異なる背景や運命が設定されています。主人公のケン一は行方不明の叔父を探し、さまざまな困難に立ち向かいます。原子科学者の山田野加賀士やフウムーンのロココ、そして超大国の代表キャラクターなど、物語の展開に欠かせない人物たちが絡み合うことで、作品はより深みを持っています。

影響とアニメ化

アニメ版『フウムーン』は1980年に放送され、多くの視聴者に愛されました。この作品はその後も再版やBlu-ray化が行われ、手塚作品の中でも特に重要な位置を占め続けています。また、手塚治虫の没後に彼の構想ノートが発見され、原作の背景やキャラクターに関する新たな情報も流出しました。このように、『来るべき世界』は手塚治虫の創作過程を知る上でも極めて興味深い作品の一つです。

結論

『来るべき世界』は、手塚治虫が描いた未来に関する想像力が溢れる作品であり、過去の発表から今日にかけて影響を与え続けています。今後の世代にも読み継がれるべき日本の文化的遺産として、その価値は決して色あせることがありません。

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