東京の女

東京の女（とうきょうのひと）

「東京の女」は、日本の女性デュオ、ザ・ピーナッツによって1970年に発表された歌謡曲です。彼女たちの多岐にわたるキャリアの中でも、特異な背景を持つ楽曲として知られています。

楽曲制作の背景

この楽曲が注目される点の一つは、その作曲者が沢田研二氏であることです。沢田氏は当時、絶大な人気を誇っていたグループサウンズ、ザ・タイガースのリードボーカルとして活動していましたが、早くから作曲家としても才能を発揮しており、ザ・ピーナッツにもこの楽曲以外にも作品を提供しています。作詞は多くのヒット曲を手がけた山上路夫氏、そして編曲はザ・ピーナッツの音楽性の確立に不可欠な存在であった宮川泰氏が担当しており、日本の音楽界を代表するクリエイターたちが集結して制作されました。

楽曲の構成と特徴

本楽曲は全部で五番構成となっており、それぞれの番の結びには異なる東京の象徴的な地名が登場します。歌詞の展開に合わせて、一番から順に「銀座」「赤坂」「青山」「新宿」、そして最後に「東京」という形で織り込まれており、楽曲の舞台設定を鮮やかに描き出す要素となっています。これらの地名は、当時から日本の流行の中心であった東京の様々な表情や、そこで生きる人々の情感を表現する上で効果的に機能しています。

音楽的な特徴としては、同名のザ・ピーナッツの楽曲「大阪の女」が演歌的な色合いを持つのに対し、本楽曲は演歌調ではなく、洗練された和製ポップスの流れを汲む軽快でメロディアスな曲調となっています。宮川泰氏による編曲は、楽曲のポップな魅力を引き出し、ザ・ピーナッツならではのハーモニーが映えるアレンジが施されています。

テレビでの披露と後世への影響

「東京の女」は発表された年の年末、1970年12月31日に放送された『第21回NHK紅白歌合戦』において披露されました。当時のテレビ放送という制約もあり、フルコーラスではなく、一部（ワンコーラス分）を省略した短縮バージョンでの歌唱となりました。この時の映像は、NHKによってカラーで保存されており、当時のザ・ピーナッツのパフォーマンスを現代に伝えています。

発表から長い年月が経った後も、この楽曲は日本の音楽シーンにおいて再評価されています。2000年には、日本のシンガーソングライターである椎名林檎氏がシングル「ギブス」のカップリング曲として、また2008年発売のアルバム『私と放電』にもカバーバージョンを収録しました。椎名氏によるカバーは、原曲とは異なるアプローチで楽曲の魅力を引き出し、新たな世代にこの名曲を知らしめるきっかけの一つとなりました。

これらの情報は、キングレコードが2004年に発売した「ザ・ピーナッツ メモリーズBOX」に付属の解説書などを参考に構成されています。ザ・ピーナッツという偉大なアーティストと、沢田研二、山上路夫、宮川泰といった希代の才能が出会って生まれた「東京の女」は、日本の歌謡史において今なお語り継がれるべき一曲と言えるでしょう。

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