東京スマートドライバー

東京スマートドライバー

「東京スマートドライバー」（TOKYO SMART DRIVER）は、首都高速道路における交通事故の件数を減らすことを目的として、2007年8月より展開されている啓発活動の総称です。

このプロジェクトは、放送作家である小山薫堂氏の発案により、首都高速道路株式会社と、東京都を拠点とする民放ラジオ局5社（TBSラジオ、ニッポン放送、文化放送、TOKYO FM、J-WAVE）が共同で推進しています。従来の交通安全運動が、速度規制や飲酒運転の取り締まりといった『強制』的な手法に重点を置きがちであったのに対し、東京スマートドライバーは異なるアプローチを取っています。それは、すべてのドライバーが持つ「事故を起こしたくない」という根源的な感情を、他者への「思いやり」へと昇華させ、ドライバー間の良好な関係性を築くことで、結果として事故を未然に防ぐことを目指すというものです。罰則や規制ではなく、人々の内面的な意識の変化と、そこから生まれる自発的な行動に焦点を当てています。

プロジェクトのシンボルマークには、鮮やかな濃いピンク色のチェッカーフラッグが採用されており、この色はキャンペーンのメインカラーとしても広く使用されています。このチェッカーフラッグは、モータースポーツにおけるゴールの意味合いに加え、「運転を終え、無事に大切な人の待つ自宅へ帰る」という、ドライバーにとって最も重要で普遍的な「ゴール」を象徴しています。

具体的な活動内容としては、いくつかのユニークなプロジェクトが展開されました。

ホメドライブ：運転中に生じやすいイライラや焦燥感を意識的にコントロールし、代わりに周囲のドライバーの良い運転行動や心遣いを見つけ出し、それを心の中で「ホメコトバ」として肯定的に捉え、そのポジティブな気持ちを広げていくことを提唱しています。この活動を促進するため、プロジェクトのメッセージをラッピングした車両「ホメパト」（日産GT-Rが使用された時期もある）が首都高を巡回したり、運転中に嬉しい気持ちになるような「ホメコトバ」が印刷された「ホメダマ」という名の飴玉が配布されたりしました。

ホメール：ウェブサイト上で展開された企画で、ドライバー自身や他のドライバーの安全運転、譲り合い、思いやりのある行動など、素晴らしいと感じた運転に関する体験やそれに対する感謝の気持ちをメッセージとして投稿し、共有するものです。これにより、良い運転行動が可視化され、他のドライバーへの啓発や肯定的なフィードバックの機会を提供しました。

また、本プロジェクトは、首都高速道路の公式キャラクターであるMr.ETCが腕章を着用するなど、公式側からのサポートも受けています。さらに、二輪車を対象とした姉妹プロジェクトとして「東京スマートライダー」も展開されており、安全運転の啓発活動をより広い層に広げています。

この活動には、業種を問わず多数の企業や団体が協賛・協力しており、プロジェクトの理念に賛同する輪が広がっています。例えば、J-WAVEではプロジェクトに関連したミニ番組「TOKYO SMART DRIVER SHARE SMILE」が放送されたこともあります。音楽面では、著名なテクノアーティストであるケン・イシイ氏がテーマBGMを手がけるなど、多方面からのクリエイティブな参加も見られました。

東京スマートドライバーは、単なる交通安全運動に留まらず、ドライバー一人ひとりの意識と行動を変革することで、首都高速道路の交通環境全体をより安全で快適なものにすることを目指す、社会的ムーブメントともいえる取り組みです。その活動は、後に「ジャパンスマートドライバー」として全国的な展開へと発展する基礎となりました。

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