東京市史稿

東京市史稿について

『東京市史稿』は、東京市及び東京都が発行した史料集で、1901年から2021年までの間に全11篇184巻が刊行されました。この資料集は、明治維新から東京市の成立までの歴史を中心に据えつつ、江戸時代以前の情報も含まれています。そのため、東京の歴史を知る上で非常に重要な資料となっています。

目的と意義

この編纂プロジェクトは、地方自治が発展している欧米の状況に触発され、東京における自治意識の高まりと自治体史への関心を背景にしています。東京は日本の首都であり、多様な問題を抱えているため、東京市の制度沿革を調査し整理することは今後の行政の指針になると考えられました。

沿革

1911年に事業が始まり、その後1943年に東京都制が施行されたことで東京都に業務が移行しました。1968年からは東京都公文書館が引き続き編纂を担当しています。『東京市史稿』は、都市史研究において国内外で類を見ない長期プロジェクトとなり、江戸・東京に関する主要文献の一つとして位置付けられています。

特に研究者からの問い合わせや、マスコミからの調査依頼に応じ、都民の学習や研究をサポートする役割も果たしています。また、東京市の歴史における具体的なかかわりをもっと深く掘り下げる資料としても利用されています。

編纂の流れ

東京市の歴史が本格的に編纂される契機は、1901年における東京市参事会の議論にありました。それに基づいて、東京市沿革史編纂委員会が設置され、内容は「明治元年から明治34年度までの制度沿革の調査と編纂」とされました。しかし、日露戦争の影響で予算が縮小され、編纂事業は停滞した時期もありました。

この状況を打破するため、明治39年に文学者の塚越芳太郎が編集に関わることになり、彼の就任後、概要が整い、具体的な編集方針が策定されました。その後も様々な編纂が行われ、最終的には多岐にわたるテーマが扱われることになりました。

実際の刊行

初期の刊行計画は、東京の歴史を包括的に扱うものでしたが、時が経つにつれて刊行物は多様化しました。例えば、『皇城篇』『御墓地篇』『変災篇』『上水篇』など、各篇は詳細な資料を含んでおり、社会情勢の変化に応じて発展していきました。最初の刊行の一つである『皇城篇』は、江戸城やその以前の歴史を含むもので、1911年から1918年にかけて刊行されました。

続いて、大正や昭和初期には他の重要な篇が発行され、最終的には328巻以上の資料が整備され、特に市街編に関しては毎年刊行が続けられました。これは東京市の発達史を持続的に記録するプロジェクトとして、後の研究や教育にも寄与しています。

現在の発展

また、『都史資料集成』という形で、市街編が中断された後もプロジェクトは継承され、様々なテーマ別の史料集が企画されています。時代に沿った新たなテーマが取り上げられ、より深い視点を提供するための情報集として、その役割が続いています。

これにより、『東京市史稿』は単なる史料集に留まらず、東京の過去と現在を結ぶ重要な役割を果たしています。このように、東京市の歴史は今も生き続け、次世代への知識の礎となっています。

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