東京都政不当介入事件

東京都政不当介入事件

「東京都政不当介入事件」、または「東京都民生局長室占拠事件」と呼ばれるこの出来事は、1974年8月下旬に発生しました。この名称は、主に日本共産党とその関連組織によって使用されているもので、事件の当事者である東京都や部落解放同盟自身が公式に用いるものではありません。また、東京都がこの一連の行動を「不当介入」と認めたわけでもなく、刑事事件や民事事件として司法の場で立件された事実もありません。

事件は1974年8月26日に始まりました。約20名の部落解放同盟関係者が東京都庁を訪れ、当時の民生局に対し、同団体の要求事項をまとめた「6項目の確認」と呼ばれる内容の受け入れを強く求めました。

要求の核心の一つは、応急生活資金の貸付に関するものでした。部落解放同盟側は、この貸付窓口を同団体に一本化することを事実上要求しましたが、東京都側はこれに応じませんでした。これをきっかけとして、解放同盟の関係者たちは民生局にとどまり続け、やがて民生局長室に立てこもる行動に出ました。

立てこもりは約5日間にわたり、8月30日まで続きました。この間、彼らは局長室の窓から同団体のシンボルである荊冠旗を掲げるなどの示威行為を行い、その結果として民生局の通常業務は完全に麻痺状態に陥りました。

部落解放同盟が東京都に受け入れを迫った「6項目の確認」は、以下の内容でした。

第一項：応急生活資金の貸与
部落解放同盟都連合会を通じて申請された43名分については、速やかに貸し付けること。その他の申請者については、東京都と同連合会で構成される「東京都同和対策協議会」の小委員会で協議し、東京都と同連合会が共同で「自覚・自立の意識」を高めるための教育を実施した上で、貸付の可否を決定すること。
第二項：都立産業労働会館の使用
都立産業労働会館（現在の東京都人権プラザ）を、狭山事件に関する闘争の拠点として、宿泊を含め約1ヶ月間使用することを認めること。
第三項：都知事との面会
部落解放同盟の代表と東京都知事との面会を、9月10日までに実現すること。
第四項：狭山裁判に関する都議会の決議
狭山裁判について、東京都議会側と協議し、審議を促進して決議を行うように働きかけること。
第五項：ビラの誤記訂正
部落解放同盟正常化都連（現在の東京人権連）が発行したビラ（8月30日付）に事実と異なる記述があるため、東京都が訂正したものを発行すること。
第六項：同和行政の総点検
過去5年間の東京都の同和行政全般について、総点検を実施すること。

最終的に東京都は、上記の「6項目の確認」のうち、第四項と第五項を除く内容を受け入れました。第三項に掲げられていた都知事との面会も、要求期限からわずかに遅れたものの、9月13日に実現しています。

この事件に関連して、同年9月16日夜には、第二項に基づき部落解放同盟とともに都立産業労働会館に宿泊していた中核派のメンバーが、革マル派による襲撃を受けるという事態が発生しました。この際、現場に駆けつけた警察官や会館の管理者が事情聴取や内部への立ち入りを求めましたが、部落解放同盟側は「内輪の問題だ」としてこれを拒否しています。

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