東京難民

東京難民（小説・映画）

『東京難民』は、福澤徹三による日本の小説であり、2007年から2011年まで『小説宝石』に連載されました。2014年には佐々部清監督、中村蒼主演で映画化もされています。

成立の背景

著者の福澤徹三は、専門学校講師時代の経験から、就職を深く考えずにフリーターや無職になる若者たちの姿を見て、現代経済を小説で伝えようと決意しました。「東京難民」というタイトルには、戦う間もなく社会から排除されたり、真面目に努力しても報われない時代へのメッセージが込められています。

あらすじ

主人公の時枝修は、大学を除籍となり、親からの仕送りも途絶え、東京で一人ぼっちになります。頼る人もなく、日雇いの仕事やアルバイトを転々としますが、どれも長続きしません。家賃を滞納し、住む場所を失い、ネットカフェを転々とする生活を送ります。ホストクラブで働くも、騙されて借金を背負い、ついにはホームレスにまで転落します。

河川敷でホームレスとして生活を始めた修は、様々な人々との出会いを通じて、生きる意味を問い直していきます。以前大学の公園で見かけたモスマンというホームレスからは、「おまえはもうすぐ正念場だ」と告げられます。ある日、音信不通だった父親と再会しますが、修は父親の元には戻らず、自分の力で生きていくことを決意します。

路上での雑誌販売に精を出し、自立を目指す修でしたが、過去のトラブルから若者たちに襲われ、仲間のホームレスを守るためにその場を去ります。ボランティアの光本真理からの誘いを断り、修は再び新しい一歩を踏み出すことを決意します。

映画版

映画版では、佐々部清監督が、格差社会の中でもがく若者たちの姿をリアルに描いています。ネットカフェ難民の実態、ホストの裏社会、日雇い労働の過酷さなど、現代日本のタブーとされる部分に焦点を当てています。

映画では、原作から登場人物やエピソードが大幅に сокращены されており、物語の展開や結末も異なっています。

登場人物

時枝修: 本作の主人公。大学を除籍になり、東京でホームレス生活を送る青年。
北条茜: ホストになった修に貢ぐ看護師。
順矢: ホストクラブのホストで、修の同僚。
川辺瑠衣: 修を騙してホストクラブに連れて行く女。
モスマン: 大学の公園にいるホームレス。
熊西: 河川敷で生活するホームレス。
* 光本真理: ホームレスを支援するボランティアの大学生。

テーマ

『東京難民』は、現代社会における格差、貧困、孤独といった問題をテーマにしています。主人公の修が、社会の底辺に転落していく過程を通して、現代社会の厳しさや生きることの難しさを描いています。同時に、どん底から這い上がろうとする主人公の姿を通して、希望や再生の可能性も示唆しています。

評価

穂村弘は、主人公がどん底まで転がり落ちていく過程が丁寧に描かれている点を評価し、タカザワケンジは、主人公の甘さや青臭さが残る点が、読後に爽やかさを感じさせると評しました。

映画版は、R15+指定ではあるものの、スマホ依存の若者たちにこそ観てほしい作品として、現代社会の現実を突きつける作品として評価されています。

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