東京電力原発トラブル隠し事件

東京電力原発トラブル隠し事件とは

東京電力における原発トラブル隠し事件は、2002年に発覚した重大な事故で、電力会社が管理する原子力発電所におけるトラブル記録を意図的に改竄・隠蔽していたことから生じました。この事件は、当時の社長である南直哉が引責辞任する事態を招き、産業界にも多大な影響を与えました。

事件の概要

この不正行為が露見したきっかけは「自主点検」と呼ばれる作業でした。これは、法律で定められている定期点検とは異なり、電力会社が自主的に行う点検です。原子炉等規制法により、自主点検で問題が見つかった場合、その内容を国に報告する義務があります。

2000年7月、ゼネラル・エレクトリック・インターナショナル社（GEI）の技術者が、東京電力が運営する福島第一及び第二、柏崎刈羽の3原発の点検記録を改竄しているとの告発を通商産業省（現・経済産業省）に行いました。この告発後、保安院は事実関係を調査しようとしましたが、東京電力側は「記憶にない」「記録にない」と非協力的な態度を取り続けたため、調査は難航しました。

経緯と発覚

しかし、2002年2月にGEIが保安院に全面協力を申し出たことで、事態は進展しました。この結果、東京電力は不正を認めざるを得なくなり、8月29日には保安院が記者会見を開き、東京電力の不正を公表しました。その夜、築舘勝利常務が「未修理のものが現存するが、安全上問題はない」と強調し、翌日には南直哉社長が陳謝しました。

南社長は、原子炉の点検において水中溶接を利用して修理したことを認め、これが発覚を恐れて記録を改竄した理由であると述べました。結果的に、南社長を含む歴代社長5名が辞任しました。

刑事告発・改竄内容

事件の調査過程で、経済産業省は改竄が組織的に行われていた疑いがあるとして、東電を核原料物質及び原子炉の規制法違反で刑事告発する可能性を示唆しましたが、結局は厳重注意で終わりました。

具体的には、福島第一、第二、柏崎刈羽の各原発において、1980年代から1990年代にかけて実施された自主点検記録において、部品のひび割れに関する改竄が29件確認されました。このうち、修理済みのものもありましたが、現在もひび割れが残る機器が使用されている可能性は高いとされています。

反響と影響

事件の発覚から2年間も情報が公開されず、経済産業省は批判を受けることになりました。福島県の知事も国の責任を指摘し、内部告発を重要視した報告書を出版しました。国会でも問題提起がされ、東京電力への聴取が求められました。

事件により、原発の運転停止が相次ぎ、翌年の夏には日本全体での電力不足の危機が現実のものとなりました。最終的には古い火力発電所を再稼働させ、電力供給を維持しました。

この原発トラブル隠し事件は、電力業界や原発政策に対する信頼を大きく揺るがす要因となり、以後の原発関連の法律や規制に影響を及ぼすこととなりました。

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