東北大学災害科学国際研究所

東北大学災害科学国際研究所 (IRIDeS): レジリエンス社会を目指した防災研究の最前線

2011年の東日本大震災は、日本の防災体制の脆弱性を改めて浮き彫りにしました。この経験を踏まえ、東北大学は、低頻度巨大災害への対応を強化するため、2012年に災害科学国際研究所（IRIDeS）を設立しました。IRIDeSは、実践的防災学の推進を通して、災害に強いレジリエンス社会の構築を目指している、東北大学を代表する研究所です。

IRIDeSの設立と理念

IRIDeS設立の背景には、2000年代初頭から東北大学で進められていた防災研究の蓄積があります。宮城県沖地震の発生確率の高まりを受け、学際的な防災研究チームが結成され、災害情報の共有、避難所運営、帰宅困難者対策といった課題に取り組んできました。2007年には「東北大学防災科学研究拠点」が発足し、文部科学省の支援も得ながら研究活動は本格化しました。しかし、東日本大震災の甚大な被害は、既存の防災研究システムの限界を露呈させました。

この反省を踏まえ、IRIDeSは、低頻度巨大災害に対する包括的な防災計画論の構築を目指して設立されました。「国際」という名称には、震災のグローバルな影響と、その教訓を国際社会に還元するという強い意志が込められています。東北大学における附置研究所としては70年ぶりの設立であり、震災発生からわずか1年余りでのスピード設立は、その緊急性と重要性を物語っています。

IRIDeSのミッションは「実践的防災学」の創成です。災害発生前からの事前準備、災害発生時の対応、被害拡大の防止、緊急時の対応、復旧・復興、そして将来に向けた備えまで、災害サイクル全体を視野に入れた研究開発を行っています。過去の災害から得られた教訓を体系化し、将来の災害に備えるための知見を蓄積することが、IRIDeSの重要な役割です。

研究分野と組織体制

IRIDeSは、多様な専門分野を統合した学際的な研究体制を敷いています。地震学、津波工学、防災工学、社会科学、人文科学、医学など、幅広い分野の研究者が集結し、複雑な災害現象の解明と防災対策の高度化に取り組んでいます。

主な研究部門としては、災害評価・低減研究部門、災害人文社会研究部門、災害医学研究部門、防災実践推進部門、そして国際研究推進オフィスなどが挙げられます。これらの部門では、地震・津波リスク評価、災害情報管理、災害医療、防災教育、国際協力といった多岐にわたる研究プロジェクトが進行しています。

さらに、東京海上日動火災保険や応用地質などの企業との連携による寄附研究部門も設置され、産学連携による研究開発も積極的に推進しています。国連開発計画(UNDP)との共同事業として設立された災害統計グローバルセンターも、IRIDeSの国際的な活動を象徴する存在です。

教育活動

IRIDeSは、単独の学部・学科を有するわけではありませんが、東北大学内の関連学部・研究科（工学研究科、理学研究科、文学研究科、医学系研究科など）に所属する学生が、IRIDeSで研究活動に参加することができます。IRIDeSに所属する教員は、大学内の授業も担当しており、教育活動にも積極的に関与しています。

今後の展望

IRIDeSは、東日本大震災の経験と教訓を活かし、今後発生が予想される東海・東南海・南海地震など、巨大災害への備えを強化するための研究を継続しています。その成果を社会実装し、災害に強い、そして災害から学び続ける社会システムの構築を目指した取り組みを、今後も精力的に推進していくことでしょう。

まとめ

IRIDeSは、学際的な研究体制と国際的な連携を駆使し、実践的防災学の新たな地平を切り開こうとする研究所です。その活動は、日本のみならず、世界中の防災・減災活動に貢献するものと期待されています。将来的には、IRIDeSの研究成果が、より安全で安心な社会の実現に大きく寄与するものと確信しています。

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