東大寺大仏殿の戦い

東大寺大仏殿の戦い：戦国時代の権力闘争と大仏殿焼失の悲劇

永禄10年（1567年）4月18日から10月11日にかけて、大和国東大寺周辺で、松永久秀と三好三人衆（三好長逸、三好政康、岩成友通）、筒井順慶、池田勝正らが激突した市街戦、それが東大寺大仏殿の戦いである。多聞山城周辺でも戦闘が展開されたため、「多聞山城の戦い」とも呼ばれるこの戦いは、戦国時代の権力争いと、日本を代表する建造物である東大寺大仏殿の焼失という悲劇的な出来事を歴史に刻み込んだ。

戦いの発端：三好政権の崩壊と権力争い

永禄7年（1564年）、三好長慶の死後、後継者争いと権力闘争が激化。翌永禄8年、三好三人衆は将軍足利義輝を暗殺する永禄の変を起こした。この事件後、三人衆と松永久秀は、政権の主導権を巡って対立を深めていく。三人衆が松永方の飯盛山城を襲撃したことで、両者の対立は決定的となった。

戦いの序盤：松永久秀の苦戦と堺の攻防

松永久秀はまず、三人衆と連携していた筒井順慶の筒井城を攻略したが、その後は劣勢に立たされる。三人衆は淡路衆や筒井軍と連携し、松永久秀の拠点である多聞山城を攻撃、周辺の城を次々と落城させた。危機感を抱いた松永久秀は、摂津国人衆や畠山高政率いる根来衆の支援を得て堺を制圧、畿内の戦略拠点を取り戻した。しかし、三人衆軍の反撃を受け、数的不利を悟った松永久秀は停戦に応じ、堺を明け渡した。

転機：三好義継の寝返りと信貴山城からの移動

永禄10年4月6日、三好氏の当主・三好義継が松永久秀に保護を求めてきた。この寝返りは、劣勢にあった松永久秀に大きな力となった。義継を擁した久秀は、信貴山城から多聞山城へ移動、戦いの舞台は大和へと移った。

東大寺周辺での激戦：膠着状態と大仏殿焼失

三人衆と筒井軍の連合軍は、東大寺周辺に布陣し、松永久秀と三好義継の連合軍と対峙した。両軍は東大寺南大門周辺で激しい銃撃戦を展開。膠着状態が続く中、10月10日夜、松永久秀・三好連合軍は東大寺を奇襲。戦闘の中で穀屋から出火、大仏殿は炎上し焼失した。大仏殿焼失の原因については、松永久秀の放火説、三好方の失火説、兵士による放火説など、諸説が入り乱れており、現在も議論が続いている。

戦いの終結とその後：信長の上洛と松永久秀の恭順

大仏殿焼失後、三人衆・筒井連合軍は敗走。松永久秀・三好義継連合軍は、大和での勢力を拡大した。その後も小規模な戦闘は続いたが、織田信長の上洛により、戦局は大きく変化。松永久秀は信長に恭順し、大和を支配下に置いた。

東大寺大仏殿の復興

焼失した東大寺大仏殿は、江戸時代になってようやく再建された。その過程には、多くの困難と長い歳月が費やされた。

まとめ

東大寺大仏殿の戦いは、戦国時代の権力争いを象徴する出来事であり、東大寺大仏殿の焼失は、日本の文化遺産にとって大きな損失であった。大仏殿焼失の原因をめぐる謎や、戦国時代の複雑な政治情勢を知る上で重要な史実である。戦いの過程で、様々な勢力の思惑が交錯し、戦略、駆け引き、偶然が複雑に絡み合い、結果として大仏殿という歴史的建造物を灰燼に帰したという、複雑で悲劇的な出来事であったと言える。

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