東山貝塚遺跡

東山貝塚遺跡：目黒区の歴史を刻む複合遺跡

東山貝塚遺跡は、東京都目黒区東山に位置し、旧石器時代から縄文時代、弥生時代、古墳時代にかけての複合遺跡です。特に縄文時代の貝塚や竪穴建物跡が発見されており、目黒区の重要な歴史的遺産として知られています。目黒区遺跡番号は8番です。

概要

東山貝塚は、北区の西ヶ原貝塚、港区の丸山貝塚と並び、東京三大貝塚の一つとして数えられています。この地域からは、貝塚の他に竪穴建物跡も見つかっており、縄文時代の人々の生活を知る上で貴重な資料を提供しています。また、近現代の遺構として駒沢練兵場跡なども存在します。

明治時代からこの地域で縄文時代の埋蔵文化財が出土することは知られていましたが、大正時代に宅地造成中に竪穴建物跡が発見されたことで、その存在が広く知られるようになりました。昭和50年代末から昭和60年代初頭にかけての発掘調査で、遺跡の一部が残存していることが確認され、その後の周辺地域の開発に伴い、断続的に発掘調査が行われ、遺跡の全貌が徐々に明らかになってきました。

現在、東山貝塚公園がある一帯では、明治時代から貝殻や土器片などが出土していました。出土する貝殻は海水産のものが多く、淡水産のものは少ないことから、かつて目黒川沿いの低地が海であったことを示唆しています。

竪穴建物跡の発見

東山遺跡で竪穴建物跡が検出されたのは1926年（大正15年/昭和元年）のことです。当時、この地域は駒沢練兵場の北辺に位置し、人口増加に対応するための宅地造成が行われていました。『史学雑誌』に掲載された下村作次郎の報告によると、測定できたものだけでも6地点約13箇所、その他にも多数の竪穴建物跡が確認され、土器や石器なども出土しました。この発見は新聞などでも大きく報道され、東山遺跡の名が広く知られるようになりました。

発掘調査の再開と新たな発見

駒沢練兵場の造成や大規模な土地区画整理事業によって、東山地区の遺跡は完全に破壊されたと考えられていました。しかし、1983年（昭和58年）に郵便局の新設工事中に縄文中期の土器片などが出土したことから調査が行われ、建物跡などが検出され、台地縁辺に沿って集落の一部が残されていることが明らかになりました。さらに、1985年（昭和60年）の調査では弥生時代後期の建物跡が検出され、東山遺跡の年代が縄文中期から晩期という従来の認識よりも広い範囲に及ぶことが判明しました。以降、地域での開発が行われるたびに断続的に発掘調査が実施されています。

出土品から推定される暮らし

貝塚の貝層から出土した主な貝類は、ハマグリ、シオフキ、アサリ、イソシジミ、ヤマトシジミなどです。これらの貝は、海水産の貝とともに海水と淡水が混ざり合う水域に生息するものが多く、縄文時代には目黒川周辺の低地が海であり、東山近辺がその奥深い入り江に位置していたことを示唆しています。遺跡からは、クロダイ、アジなどの魚の骨や鱗、イノシシ、シカ、アナグマ、イヌ、クジラなどの動物の骨も出土しており、狩猟だけでなく漁労も行われていたと考えられます。目黒区内の他の遺跡では漁労の痕跡があまり見られないため、東山遺跡の大きな特徴となっています。

東山貝塚公園

東山遺跡にちなんで、1979年（昭和54年）に東山貝塚公園が設置されました。公園内には復元された竪穴建物模型があり、区内の小学生が郷土史教育の一環として訪れるなど、地域住民に親しまれています。公園裏の崖からは湧水が出ており、公園内に池を形成し、その水は目黒川に流れ込んでいます。

東山貝塚遺跡は、目黒区の歴史と自然を伝える貴重な場所として、これからも大切に保存され、活用されていくことでしょう。

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