東急観光爆破事件

東急観光爆破事件：背景と概要

1977年2月21日、大阪市北区で発生した東急観光爆破事件は、日本の新左翼活動家であった加藤三郎によって引き起こされた爆弾テロ事件です。この事件は、当時の社会情勢と加藤の思想的背景が複雑に絡み合って発生しました。

被害法人：東急観光（現・東武トップツアーズ）の来歴

東急観光（後のトップツアー、現在は東武鉄道グループの東武トップツアーズ）は、1956年に設立された東急グループの旅行会社です。1970年代当時、同社は韓国向けの買春ツアーを斡旋していたことで知られていました。加藤は、この行為を「かつての植民地に対して、反省もなく性的搾取を繰り返す恥知らずな行為」と捉え、強い憤りを感じていました。

事件の概要

1977年2月21日、大阪市北区堂島のオフィスビル2階のエレベーター前フロアで、突如として爆発が発生しました。爆風により窓ガラスや天井が吹き飛ばされ、2階に入居していた東急観光関西支社の社員2名と、偶然来社していたシンガポール航空の社員2名が負傷しました。その後の捜査で、現場から消火器の破片などが発見され、消火器爆弾による爆破事件と断定されました。

加藤三郎の意図

加藤は、過去の犯行では必ず犯行声明文を発表していましたが、本件では敢えて声明文を出しませんでした。その理由として、1970年代に社会問題となっていた韓国への買春ツアーに対する糾弾が目的であることは、既に報道されていたことが挙げられます。また、声明文を出すことで、自身の思想的背景にあるヴィルヘルム・ライヒの影響が明らかになり、彼の著書を愛読していた自分自身が特定される可能性を考慮したためでもありました。

事件の背景にある社会情勢と思想

この事件は、当時の社会情勢、特に韓国における買春ツアーの問題と、加藤自身の新左翼的な思想が深く関わっています。加藤は、東急観光の行為を過去の植民地支配の延長線上にある性的搾取と捉え、強い義憤を感じていました。また、ヴィルヘルム・ライヒの思想に傾倒していたことも、彼の行動に影響を与えたと考えられます。

事件の影響とその後

東急観光爆破事件は、社会に大きな衝撃を与え、新左翼運動に対する社会の関心を高めました。また、企業はテロ対策の重要性を認識するようになりました。加藤はその後逮捕され、事件の責任を問われることになりました。

参考文献

『朝日新聞』1977年2月21日夕刊
『読売新聞』1977年2月21日夕刊
加藤三郎『意見書 「大地の豚」からあなたへ』思想の科学社、1992年

関連項目

新左翼

この事件は、単なる爆弾テロ事件としてだけでなく、当時の社会情勢や思想的背景を理解する上で重要な出来事です。加藤の行動は決して肯定されるものではありませんが、事件の背景を理解することで、当時の社会が抱えていた問題や、人々の思想について深く考察することができます。

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