東恩流

東恩流（とうおんりゅう）

東恩流は、沖縄の空手の流派の一つで、1940年代に許田重発によって創設されました。この流派は、恩師である東恩納寛量の技術と精神を引き継ぎ、特に自衛隊での指導を通じてその発展を遂げてきました。

起源と流派の歴史

起源は、許田重発が自衛隊で空手の指導を始める際に、流派を名乗ることが必要となり、恩師の遺徳を顕彰するために「東恩流」と名づけたことにあります。流派の創設時には、西日本の空手界に新しい息吹をもたらしました。初代宗家は許田重発、二代宗家は許田重光、三代宗家は神崎重和、そして四代宗家は池田重秀が務めています。

許田は大分県竹田に疎開した後、昭和33年頃に別府駐屯地で空手道の指導を受け持つことになりました。彼の教学スタイルは、厳格な伝承と実践を重視しており、弟子たちにもこの精神が根付いています。

主な型と技術

現在、東恩流では許田が学び伝承してきた多様な型が存在します。その中でも特に重要なものは以下の通りです。

サンチン

サンチンは、他の流派の剛柔流や糸東流と比較すると独特の形状を持っています。この型では、膝を曲げずに引き手を腸骨の上に置き、拳は肩より少し高く構えます。呼吸法も特徴的で、静かに長く吐くことが求められ、その際下丹田から中丹田へと気を集める意識が必要です。この動作は、耐の呼吸を鍛える訓練となり、身体の運足は剛硬さを保ちながら行われます。このため、稽古の締めには特に強調され、大きな呼吸音を発しながら気を発する重要な瞬間となります。

寛裕のセーサン

この型は、技術的には那覇手に分類されますが、転回方法や動作の特徴から、古伝の形式を保持しています。組んだ状態から踏み付けや受けといった進退に特徴があり、他の型とは異なり、一歩前進して終わるという独特の終了動作が備わっています。

サンセール

サンセールは、宮城長順が徴兵中の間に許田が唯一学んだ型で、動作の終わり方が他流派とは異なります。よりダイナミックな技の連続で構成され、身体の操作において高度な技巧が求められます。

ペッチュリン

剛柔流のスーパーリンペーとは異なり、こちらも独自の動作終了があり、用法によって3種類の終了が可能です。跳躍動作の二段蹴りは特筆すべきもので、許田によればこれが東恩流の根本的な技法であるとされています。

ジオン

屋部憲通から学んだこの型は、花城長茂のジオンと似通った特徴があります。動きには入り身技法を重視した要素が含まれています。

ネーパイ

呉賢貴から教わった沖縄の型で、糸東流のニーパイポの原型とされるものです。技法自体は共通する部分もありますが、内容には大きな違いがあります。

東恩流の魅力

東恩流は、豊かな技術の多様性を誇りつつも、伝統の保持に重きを置いています。許田重発は、無修正主義の立場から、本来の技を忠実に伝えることを目指しました。

近年、東恩流に対する関心が高まる中、その技法や精神はさらに多くの人に受け入れられています。空手の多様なスタイルの中でも、特有の風格を持つこの流派は、今後も注目され続けることでしょう。

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