東海道物流新幹線構想

東海道物流新幹線構想について

東海道物流新幹線構想は、2008年に日本の鉄道網に新たな物流専用路線を考案するために提唱されました。この構想の目的は、日本の物流の大動脈である東海道ルートにおいて、既存の道路インフラを最大限に活用し、貨物輸送の効率化を図ることでした。具体的には、新東名高速道路や新名神高速道路の中央分離帯を利用して、鉄道の貨物専用すなわち「新幹線スタイル」の新たな専用軌道を敷設し、スムーズに貨物列車を運行することを目指しました。

この構想は、特にCO2の排出削減に寄与することを目標としており、モーダルシフトの実現に向けた取組の一環として位置付けられました。そこで、2008年の2月には「東海道物流新幹線構想委員会」が設立され、JR貨物や関連業界の専門家たちが集まり、具体的な検討を進めました。

この案の重要なポイントは、従来の貨物輸送手段に代わる新しい手法を導入し、ひいては物流の効率を高めることです。構想によると、複線電化された鉄道が自動運転で最大25両編成の貨物列車を運行するもので、1日あたり約20万トンの輸送能力を見込んでいました。この計画では、東京から大阪にかけて約600キロメートルの距離を、平均90から100キロメートル毎時で運行し、所要時間はおよそ6時間30分となる想定です。ターミナルは東京、名古屋、大阪を中心にいくつかの地点が設けられることになっていました。

また、軌間はJRの在来線と同じ1067ミリメートルであり、5両1ユニットの複数連結による編成を実施する予定でした。それに加え、急勾配区間ではリニアモーターを駆動方式として採用することで、様々な地形に対応することが可能となっていました。

しかし、構想が進む中で、新東名や新名神高速道路の建設計画が見直され、当初の予定から予算削減等の理由で整備が変更される事態となりました。特に新名神の一部区間に広大な中央分離帯が生じたものの、2020年12月時点で新東名の全線6車線化が完了し、残りの区間の6車線化に向けた調査が始まったため、東海道物流新幹線構想は事実上消滅してしまいました。

このように、構想名に「新幹線」と付いているものの、実際には新幹線規格による整備はされず、新たな物流幹線の計画として位置付けられていました。そのため、様々な要因が重なり、最終的に実現には至らなかったのです。将来的な物流の在り方やモーダルシフトの促進に向けた新たな提案が期待される中、この構想は今後の方向性を示唆する意味でも重要な存在となるでしょう。

もう一度検索