東経139度線 (松本清張)

東経139度線

松本清張が1973年に発表した短編小説『東経139度線』は、政治と歴史に絡んだ神秘的な物語です。この作品は、群馬県を選出する代議士、吉良栄助の不幸な事故を中心に、文化や政治の深い有機的な結びつきを探る内容となっています。物語は、吉良が文部政務次官に就任してから半年後の秋の午後に始まります。

あらすじ

物語は、文部省文化課課長補佐の小川長次から吉良に対して、元宮様の倉梯敦彦が群馬県の貫前神社を訪れたいという希望があると伝えられるところからスタートします。この知らせを受けて、吉良は政治的な宣伝効果を期待し、関心を示します。小川は貫前神社周辺には、東経139度線に沿って古代の卜占にまつわる神社が多く存在することを説明し、特に139という数字が古代国妃卑弥呼に関連していることを強調します。

吉良の選挙区政策において、著名な歴史学者たちを集めて邪馬台国論争を繰り広げる提案があり、吉良はこのアイデアに賛同し、準備が進められます。手配されたメンバーは、小川の恩師である岩井教授や、京都や九州からの教授たちです。

11月半ばになると、彼らは高崎に到着し、吉良はベンツで一行を貫前神社へと案内し、神事の予行練習をします。この集まりの裏には、次回の選挙に向けた高い期待が隠されていますが、物語は思わぬ方向へ進展します。

その夜、吉良は高崎へ向かったまま行方不明になり、翌朝、彼のベンツが貫前神社近くの崖下で発見されます。この不幸な事故は、彼の政治キャリアにすべての決定的な影響を与え、物語は衝撃的な展開を迎えます。

エピソード

著者は作品に関するメモを通じて、東経139度線に沿った地域が持つ神秘性や古代の神事を多くの社会的関心に結びつけています。この線上には、鹿の肩甲骨を使った占いのような独特の神事が数多く存在すると説明しています。さらに、近代文学研究者の綾目広治は、小川の学説を通して、清張自身が抱いていた「古代の可能性」を彰顕しています。幻の邪馬台国に関連した議論は、小川の考えだけでなく、時折、清張の小説全体に共通するテーマでもあるのです。

このように、『東経139度線』は政治的背景と歴史的ロマンを巧みに織り交ぜつつ、読者に様々な解釈を提示する魅力的な作品であると言えます。事故の真相や、古代の信仰と現代の政治の接点の追求が、物語全体を通じて描かれています。

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