東雲型駆逐艦

東雲型駆逐艦

東雲型駆逐艦（しののめがたくちくかん）は、大日本帝国海軍が初期に導入した駆逐艦の艦級です。明治29・30年度計画に基づき、イギリス海軍のD級駆逐艦を参考にして、ソーニクロフト社に6隻が発注されました。この艦級は「叢雲型（むらくもがた）」とも呼ばれます。

設計

日本海軍初の駆逐艦である東雲型は、同じく第一期拡張計画で建造された雷型がヤーロー社のB級駆逐艦を参考にしたのに対し、ソーニクロフト社のD級駆逐艦をベースに設計されました。船体は乾舷の低い平甲板型で、2本の煙突を持つのが特徴です。艦首部分は、波浪に強く、海水をすくい上げにくい亀甲型（タートルバック）とされました。舵は従来の半釣合舵で、舵頭が海面上に露出していたため、被弾時の問題が指摘され、後続の暁型以降で改良が加えられました。

ボイラーにはソーニクロフト式の石炭専焼式水管ボイラーが採用され、圧力15.5kgf/cm²、飽和温度で蒸気を発生させました。主機関は直立式3段膨張4気筒レシプロ蒸気機関です。

兵装は、原型となったイギリス駆逐艦の構成を継承し、40口径7.6cm砲（安式十二斤速射砲）1門と40口径5.7cm砲（保式六斤速射砲）5門を搭載しました。7.6cm砲は上甲板後端に、5.7cm砲は司令塔上と上甲板の両舷に配置されました。後に、司令塔上の5.7cm砲を7.6cm砲に換装し、舷側の5.7cm砲も砲盾なしの山内式に換装されています。

魚雷兵装として、上甲板後部の中央線上に2つの旋回台を設け、それぞれに人力旋回式の45cm魚雷発射管が1門ずつ設置されました。

同型艦

東雲型駆逐艦は全艦が日露戦争に参加し、日本海海戦にも参加しました。

東雲（しののめ）：発注時の艦名は第三号水雷艇駆逐艇。1899年2月1日にイギリスで竣工し、同年4月1日に横須賀に到着しました。1913年7月20日、淡水から馬公へ回航中に安平港北西沖で暴風のため座礁、同年7月23日に船体を切断して沈没し、同年8月6日に除籍されました。同年11月29日、沈没したまま売却されました。
叢雲（むらくも）：発注時の艦名は第四号水雷艇駆逐艇。1898年12月29日にイギリスで竣工し、翌年4月23日に横須賀に到着しました。1919年4月1日に雑役船（潜水艇母船兼掃海船）に指定され、叢雲丸と改称されました。1920年7月1日に特務艇（二等掃海艇）に編入され、叢雲に再改称。1922年4月1日に再び雑役船（標的船）となり、1925年3月12日に廃船が認可され、同年6月4日に千葉県洲崎灯台沖で実艦標的として撃沈処分されました。
夕霧（ゆうぎり／ゆふぎり）：発注時の艦名は第七号水雷艇駆逐艇。1899年3月10日にイギリスで竣工し、同年6月22日に横須賀に到着しました。1919年4月1日に雑役船（潜水艇母船兼掃海船）に指定され、夕霧丸と改称されました。1920年7月1日に特務艇（二等掃海艇）に編入され、夕霧に再改称。1922年4月1日に再び雑役船（標的船）となり、1924年3月14日に廃船が認可されました。
不知火（しらぬい／しらぬひ）：発注時の艦名は第八号水雷艇駆逐艇。1899年5月13日にイギリスで竣工し、同年11月10日に横須賀に到着しました。1922年4月1日に特務艇（二等掃海艇）に編入され、1923年6月30日に二等掃海特務艇に類別変更。同年8月1日に雑役船（運貨船）に編入され、公称第2625号に改称、1925年2月25日に廃船が認可されました。
陽炎（かげろう／かげろふ）：発注時の艦名は第九号水雷艇駆逐艇。1899年10月31日にイギリスで竣工し、翌年3月14日に佐世保に到着しました。1922年4月1日に雑役船（曳船兼交通船）に編入され、1924年10月8日に廃船が認可されました。
薄雲（うすぐも）：発注時の艦名は第十号水雷艇駆逐艇。1900年2月1日にイギリスで竣工し、同年5月14日に鹿児島に到着しました。1922年4月1日に特務艇（二等掃海艇）に編入され、1923年6月30日に二等掃海特務艇に類別変更。同年8月1日に雑役船（運貨船）に編入され、公称第2525号に改称、1925年2月25日に廃船となり、同年4月29日に伊豆大島沖で実艦標的として撃沈処分されました。

出典

国立国会図書館デジタルコレクション - 国立国会図書館
海軍省/編『海軍制度沿革』 巻8、海軍大臣官房、1940年。
大蔵省印刷局 [編]『官報』 1898年08月29日、大蔵省、1898年。
Chesneau, Roger (1988). Conway's All the World's Fighting Ships 1860-1905. Conway Maritime.
中川, 務「日本駆逐艦史」『世界の艦船』第453号、海人社、1992年7月、12-15頁。
石橋, 孝夫「船体 (技術面から見た日本駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第453号、海人社、1994年2月、160-165頁。
阿部, 安雄「機関 (技術面から見た日本駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第453号、海人社、1994年2月、166-173頁。
高須, 廣一「兵装 (技術面から見た日本駆逐艦の発達)」『世界の艦船』第453号、海人社、1992年7月、174-181頁。
福井, 静夫『写真日本海軍全艦艇史』 資料編、KKベストセラーズ、1994年。
海軍歴史保存会『日本海軍史』 第7巻、第一法規出版、1995年。
艦船模型スペシャル No.17 日本海軍 駆逐艦の系譜 1
『官報』

関連項目

* 大日本帝国海軍艦艇一覧

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