松尾晃雅

愛知県知立市出身の松尾晃雅（まつお てるまさ、1981年11月10日生）は、かつて独立リーグやMLB傘下でプレーした元プロ野球選手（投手）である。

プロ入り前、愛知県立刈谷高校では2年時に県大会ベスト8進出が最高成績だった。卒業後、大阪教育大学に進学。大学野球部では投手として活躍し、通算19勝を挙げた。高校3年時に母子家庭となったため、大学時代はアルバイトで生活費を賄いながら野球を続けたという。

大学卒業を控えて一般企業への就職が内定していた松尾だったが、「母を楽にさせたい」という強い思いからプロ野球選手を目指すことを決意する。2004年10月、アメリカの独立リーグの入団テストに合格したが、同時期に日本国内で新たな独立リーグ、四国アイランドリーグが創設されることを知り、国内でのプレーを希望。同年12月に行われた同リーグのトライアウトを受験し、合格を果たした。そして2005年、リーグ初年度となる香川オリーブガイナーズに入団した。

香川での1年目、松尾は抑え投手として起用され、防御率1.30という好成績を収め、最優秀防御率のタイトルを獲得した。翌2006年には先発投手に転向。11勝をマークし、チームの総合優勝に貢献した。この年のNPBドラフト会議での指名には至らず、一度は退団を考えたが、プロ入りへの夢を諦めず、再挑戦を期して2007年シーズンも香川に残留した。

2007年はエースとして先発ローテーションの中心を担い、圧巻の投球を見せた。15勝を挙げて最多勝利、159奪三振で最多奪三振の投手二冠を達成。チームの前後期連覇、そして年間チャンピオンシップ制覇による完全優勝の原動力となり、その活躍が評価されてリーグの年間MVPに選出された。この年も再びNPBドラフト候補として名前が挙がったが、惜しくも指名には至らなかった。リーグ内では、チームメイトだった堂上隼人らと共に、ファンから特に人気を集める選手の一人だった。

独立リーグでの圧倒的な実績が注目を集め、2008年3月29日、MLBのボストン・レッドソックスとマイナー契約を締結した。これは、日本の独立リーグに在籍する選手が直接MLB傘下の球団と契約する初のケースとして大きな話題となった。4月1日に渡米し、レッドソックス傘下の1Aグリーンビル・ドライブに所属することになった。香川での最後の登板は、渡米直前の3月28日に行われたリーグトーナメント「阿南市長杯」での対福岡レッドワーブラーズ戦だった。

グリーンビルでは4月13日に先発投手としてデビュー。渡米当初は日米で使用されるボールの違いなどに苦労したが、5月14日の試合で渡米後初勝利を挙げた。シーズン終了までに27試合に登板し、7勝5敗、防御率4.12の成績を残した。特に後半戦は、課題とされていた四死球が減少し、投球内容が安定していった。シーズン終了後、同じレッドソックス傘下の1Aアドバンス所属チームのプレーオフに招集されたが、登板機会はリーグチャンピオンシリーズの1試合にとどまった。シリーズ終了後、日本に帰国した。

2008年9月20日、松尾は古巣である香川オリーブガイナーズの本拠地で記者会見を行った。会見では、米国での経験は心身ともに厳しいものだったが、投球技術の幅が広がるなど得難いものとなったと語った。そして、再びNPBドラフト会議での指名を目指すため、レッドソックスの了解を得て香川に一時的にスポット加入することを表明した。9月24日から10月31日までの契約期間中、チームの練習に参加したほか、アイランドリーグ選抜の一員として教育リーグであるフェニックスリーグにも出場。さらに、香川と愛媛マンダリンパイレーツによるリーグチャンピオンシップ、そしてグランドチャンピオンシップにも出場し、リリーフとして香川のグランドチャンピオンシップ連覇に貢献した。しかし、2008年10月30日に行われたドラフト会議でも、残念ながら指名を得ることはできなかった。

翌2009年2月12日、松尾は球団を通じて現役引退を発表した。引退後は、四国コカ・コーラボトリングに入社することを同時に表明。独立リーグ在籍中から熱心に取り組んでいた地域貢献活動が企業側から評価されたものであり、独立リーグを引退した選手の新たなキャリア形成におけるモデルケースとして注目を集めた。

現役時代のプレースタイルは、最速150km/hの力強いストレートを軸に、切れ味鋭いスライダーや落差の大きいカーブを組み合わせる、三振を奪える本格派右腕として知られていた。香川オリーブガイナーズでの背番号は「30」（2005年-2008年）。

2014年6月15日には、四国アイランドリーグ設立10周年を記念して開催された香川対徳島のOB戦に出場し、約6年ぶりに公式戦のマウンドに上がっている。

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